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両国関係の拡大深化へ=駐ブラジル日本国特命全権大使=島内 憲

ニッケイ新聞 2010年1月1日付け

 あけましておめでとうございます。皆様におかれては健やかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 一昨年の日本人ブラジル移住百周年に続き、昨年は北伯を中心としたアマゾン移住80周年に関する種々の記念行事が成功裏に終了しました。
 1929年にトメアスー移住地から始まったアマゾン地方の移住地の多くは過酷な自然環境下にありましたが、日本人移住者は幾多の労苦を克服し、ジュート麻や胡椒栽培を成功させ、アマゾン地域の経済・社会発展に大きく貢献しました。
 「正直」、「勤勉」、「信頼できる」としてブラジル社会から高く評価される日系社会が、こうした長い歴史の積み重ねの上に成り立っていることを当地で迎える4度目の新年に実感しております。記念行事の御成功を改めてお祝い申し上げるとともに、準備・運営に携わられてこられた方々の御努力に衷心より御礼申し上げます。
 2014年ワールドカップに続き、2016年にはリオデジャネイロ・オリンピックの開催が決定し、政治・経済両面における躍進と相俟ってブラジルの国際社会における存在感は飛躍的に高まっております。
 政治・安全保障、貿易、金融、環境・気候変動、更には軍縮といった国際場裡の主要課題はもはやブラジル抜きでは語れないと言っても過言ではありません。
 なかでも、世界経済危機からいち早く回復することで、ブラジルが経済面におけるその相対的優位性を広く内外に印象づけることに成功したことは特筆されます。21世紀を担う大国としてブラジルが年を追ってスケールアップしていることを肌で感じております。
 ブラジルに対する日本国内の意識にも大きな変化が見られつつあります。近年の日伯関係は経済関係を中心に著しい再活性化が進行しており、かつてない高みに達しつつあります。
 貿易・投資も大幅な増加傾向にあり、幅広い分野の日本企業が資源・エネルギー・食糧等伝統的分野のみならず、市場乃至生産拠点としてのブラジルに着目して拠点の構築を進める動きが顕著です。
 日伯協力の象徴でもあるデジタル・テレビ日伯方式は周辺諸国で相次いで採用されていまや南米制覇目前であり、リオデジャネイロ・サンパウロ・カンピーナス間高速鉄道への新幹線方式採用に向けた官民一体の働きかけも最終局面を迎えようとしています。このような経済関係の高度化・重層化に向けた動きを政府としてもできる限り支援していく考えです。
 100周年を契機に厚みを増した文化・学術・人的交流が一層活性化することにより、日伯間で新たな相互理解が深まっていくことも期待されます。
 伝統文化からポップカルチャーまで若い世代を中心にブラジルにおける日本への関心が高まる一方、ワールドカップやオリンピックの開催決定を契機として音楽・スポーツ等の分野でブラジルに対する関心が日本国内でも顕著に増加しております。
 その過程に於いて、約30万人に上る在日ブラジル人の方々が果たされている重要な役割がますます拡大されることを心から望むものです。
 引き続き日伯関係の更なる拡大・深化に向けて全力で取り組む所存ですので、皆様の御協力を御願い申し上げます。末尾ながら新しい年の皆様の御多幸と御健康をお祈りしまして、私の新年の御挨拶とさせていただきます。