ニッケイ新聞 2010年1月8日付け
年末年始の雨で一時は85%以上の市民が避難生活を強いられたサンパウロ州サンルイス・ド・パライチンガ市で、歴史的遺産修復への動きが始まった。
中央広場にあった町の象徴、サンルイス・デ・トローザ本部教会が2日に倒壊など、同市の被害の様子などは2日以降の伯字紙やサイトも報じているが、タウバテ市に程近い同市で、1982年に州の文化財都市に指定され、今年は国の文化財指定も予定されていた。コーヒーで賑わった18~19世紀の建造物437件が州文化財として登録されている。
この国内有数の文化財を有する町での6~8割の文化財損失の危機に、サンパウロ州歴史・文化・考古学・工芸遺産・観光保護審議会(Condephaat)と国立歴史美術遺産院(Iphan)職員らが5日に現地入り。被害調査や修復案作成作業を始めている。
8日には、01年水害での壊滅的な被害後、復旧を遂げてきたゴイアス州ゴイアス・ヴェーリョの復旧作業を担当した同州Iphan技師3人も到着する予定だ。
10メートルも増水した川の水に覆われた市では、300軒以上の家屋が全半壊し、内40件は文化財指定建造物。本部教会や、18世紀建造のメルセース教会倒壊他、町出身の作曲家の遺品などを保存していた建物も屋根だけ残し冠水など、浸水被害も含めた被害は甚大で、市役所が当初見積った1億レアルとの損害額は、清掃費に過ぎないと評価される程。
歴史的遺産の喪失、被害は市民の心にも大きな傷を残したが、カンピーナス大学教授の「修復は可能」との発言を4日付フォーリャ紙が記載。Condephaatのロヴェーナ・ネグレイロス会長も5日、全て修復可能との見方を示した。
ただ、文化財修復は莫大な金と時間がかかる。
4日には伝統のカーニバル中止も決まり、観光被害2千万レアル、商業被害1700万レアルとされる同市では、復旧資金捻出のため、カーニバル貸出しも検討中。6日に病院や学校、被災者用住宅建設支援を約束したセーラ知事は、ロヴェーナ氏らに、一刻も早い作業開始のため、可及的速やかな修復案提出をとの指示も出している。