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JICA現職教員派遣=「聞いていた話と違う!」=涙ながらに訴える参加者=「何のために来たのか」=受け入れ機関との齟齬

ニッケイ新聞 2010年1月9日付け

 平成20年度(2008年)から、JICA(国際協力機構)が行う日系社会青年ボランティア制度枠内で行う「現職教員特別参加制度」。日本の国公立学校の現職教員が帰国後の多文化共生促進を目的に現在、ブラジルで11人が活動中だが、「(日本で)説明された内容と、派遣先が理解しているものが全く違う」「何のために派遣されて来たのか分からない」と憤りの声が聞こえている。

 中南米諸国の日系人子弟支援の一環である同制度は、現職の教員を派遣し、日語・情操教育の指導、歴史・文化・習慣の紹介、学校行事の補助を行う。帰国後は、「多文化共生」の観点から、日本に居住する日系人子女を支援することを目的としている。
 昨年7月に派遣されたAさん(30代)は、教員経歴5年以上。
 だが、「日本文化や日本語、情操教育をすると言われていたのに、受け持つ授業も何もなく愕然とした。私は何のために派遣されて来たのか…」と悩みを打ち明ける。
 受け入れ私立校の職員に聞くと、「帰国後にデカセギの子供をサポートするために、ブラジルの文化や教育事情を知るのが目的と聞いていて、授業を持たせるという話はなかった。Aさんの気持ちがわからなくて可愛そうなことをした。目的は素晴らしいし、(当校に)デカセギ帰伯子弟もいるので、これから工夫したい」と続ける。
 「現在、学校側が理解してくれて、週2回1時間ずつ日語授業をしている」(Aさん)というが、以前JICA担当者に相談すると、「やりがいを変えなさい」と突き放され、不信感が増した。
 「ただ学校に居るだけの毎日で、やりがいも何もなかった」と当時を振り返り、「JICAは要請や派遣先の実情をもっと知るべきだ」と涙ながらに訴える。
 約2カ月の派遣前訓練に参加し、志を同じくした他のボランティアらも「皆がそういう状態」と口を揃える。
 同じく現職派遣のBさん(30代)も、「JICAと派遣先、派遣される人間の目的が一致していない」と指摘する。
 派遣された私立校は教師も揃っているため、任されたのは週に数回の日語校の個人授業補助。他は見学か行事の準備を手伝うだけ。
 「本当は今までの経験を生かせる小・中学校で授業を持ちたい。要請内容と違う。次から良くするためにも改善して、やることがないという状況だけは避けて欲しい」(Bさん)
 一方、受け入れ先が派遣を大歓迎しているケースもある。
 スザノ日伯学園に派遣された教員は半日の授業を受け持っているという。
 安楽恵子校長は、「もうちょっと早かったら、と思うほど良い制度。ブラジルの生活や教育現場を知ることは、在日デカセギ子弟の理解に大いになる」と話す。
 サンパウロ支所の千坂平通所長は、「(そういう不満が参加者から)上がってくれば、十分考えていく。与えられた状況の中で満足できるようにやってほしい。それがJICAの仕事」と話した。
 なお、同制度を通じて、今年7月に新たに現職教員が国内に派遣される予定で、今後はアルゼンチンなど中南米5カ国での実施が決まっている。