ニッケイ新聞 2010年1月12日付け
スリナム共和国へ出稼ぎに行ったブラジル人居住区が焼き討ちをされたが、隣接6カ国に移住している50万ブラジル人には問題を起こしているものも数多くいると11日付けフォーリャ紙が報じた。
隣国で生活するブラジル人は現在、50万人いる。上位10カ国は、パラグアイ30万人、アルゼンチン4万9500人、ベネズエラ4万8千人、ウルグアイ3万2200人、ボリビア2万4千人、スリナム2万人、仏領ギアナ1万9千人、グアイアナ5千人、ペルー4500人、コロンビア1800人。
問題がなく平穏無事に共存している代表格は、アルゼンチンとウルグアイ2カ国。スリナム共和国の場合は、難を逃れ密林の中へ避難したりしていたブラジル人家族を、空軍が出動し救出した。
ブラジル人の一部が隣国で問題を起こしているのは、仏領ギアナやスリナム、グアイアナ、ベネズエラにおける金採掘の縄張り争い。パラグアイとボリビアは、土地係争。ペルーとコロンビアは銘木の伐採など。
最近は隣国の国境付近に展開していた農業が、大豆の耕作地を求めて広範囲に拡張したことが現地人の不満をかった。アマゾン地域における資本主義の発展と呼ばれる風潮が、国境を越えて隣国へも進出したもの。
ただし、ミジ・バレンチ・ダ・コスタ大使は「我々の移住労働者の99%は安穏な、適応した生活をしており、スリナムの例は特殊な事例にすぎないし、あれも特にブラジル人排斥ではなく、都市生活者全体への対する暴力だった」と解説する。
ブラジルの開拓者精神は、政治の及ぶ限界を超えて各地に土地係争の火種をまいた。ブラジルの開拓者らは次第に、経済力を蓄え隣国に有産階級を形成し、現地政府に心配の種となった。
ブラジル人排斥の狼煙を上げるのは、収入源を持たない先住民や土地なし農民、黒人奴隷の子孫などの社会疎外者が、自分たちの生活が脅かされると誤解したようだ。それを恐れて焼き討ちが起きたと現地公館は見ている。