ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 人権相と国防相を召喚=疼く軍政の傷跡=人権相「真相究明は譲らない」=軍幹部は辞意表明

人権相と国防相を召喚=疼く軍政の傷跡=人権相「真相究明は譲らない」=軍幹部は辞意表明

ニッケイ新聞 2010年1月13日付け

 人権に関する国家計画が波紋を呼んだことでルーラ大統領は11日、ヴァヌッシ人権相とジョビン国防相を召喚、論議の焦点と辞意表明の背景を説明させたと12日付けエスタード紙が報じた。PT(労働者党)執行部のカンジド・ヴァカレーザ下議の説明によれば、大統領は選挙の年であるため、人権擁護計画を穏便に運び、国会審議に混乱が予想される複雑な議題は後回しにする考えであることを示唆した。拷問関与者の尋問については、休暇返上で話し合うと大統領側近らが述べた。

 「人権擁護国家計画」のうち物議をかもしているのは、拷問と中絶、宗教シンボルの掲示、同性愛者の結婚、報道規制、農地改革運動など。大統領には政権締めくくりの年であるため、保留されていた計画に有終の美を飾りたいところだ。
 軍政時代の拷問による殺害や行方不明など、議論の焦点となっている問題は、司法府が解決すべきことで大統領府の問題ではないと見ている。
 人権相の主張は、政治問題として取り上げない大統領府の意向。辞意を表明した軍部の態度は脅迫であり、犠牲者の叫びに威圧をかける不快な表示であると理解された。
 大統領府の一部では、軍部の対応を「反逆」と理解する者もいる。ロウセフ官房長官とマルチンス情報相は人権論争を政府の認識だけに留め、両相は同件に関知しないとする声明を発表した。
 真相究明問題は、根が深い。単なる人権相と国防相の話し合いで、治まることではない。大統領側近筋は、軍政時代の証拠書類を探し出す責務があると感じている。
 ルーラ大統領は政権獲得以来、軍部に政治犯殺害に関する書類提出を命じなかったが、心の中では気に留めていた。ルーラ政権も余すところ僅かとなり、犠牲者遺族に納得するものを見せたいと切望している。
 PT創立以来の同志ヴァヌッシ人権相の召喚は、政治空白を引き起こさない範囲で要求に対応する党の意向だ。同相は「真相究明委員会」の設立を政治取引の材料にしないと言明している。
 同相は中絶や同性愛者の結婚などでは譲歩はあっても、委員会設立では一歩も譲らないという。委員会の設立趣旨に一部でも変更や修正が行われたら、人権相辞任の覚悟をしている。同相も軍政受刑者の1人だ。