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弓場農場にバーが誕生!=辻海さん「みんなの集う場所に」=カウンターや棚も自作

ニッケイ新聞 2010年1月19日付け

 「みんなが集う場所になれば」―。自作したカウンター越しに語るのはコムニダーデ・ユバ協会(弓場農場・弓場常雄代表)の辻海さん(25、三世)だ。
 30本ほどのリキュールやウォッカ、テキーラなどの瓶が棚に並ぶ。自分の部屋を改造、バーを作り、ヤマ(弓場農場)の住民を相手にシェイカーを振る。
 同農場は開拓以来、協同の食堂で食事を摂るスタイルだが、「子供にとっては親達が食堂で毎日飲んでいるのを見たくなかったし、酔っ払った親父の説教が嫌いだった」と胸の内を明かす。
 当時15歳の多感な時代。酒が嫌いなわけではなかった。その頃から食堂や自分の部屋でシェイカーを手に、見様見真似でカクテルを作った。
 06年1月から約2年半、福井県へデカセギに。昼間は工場で働き、夜はバーでアルバイトに励んだ。自宅にも道具を揃え、友人を練習台に、技術を磨いた。
 「海! カウンターを作らないといかんね」。 帰国後、弓場の友人のこの一言が背中を押した。農場での仕事の合間を縫い、3カ月半ほどかけてバーを自作。
 昨年11月21日にオープンした。カウンター5席と、壁際にはソファが並ぶ。
 常連は、弓場やアリアンサ入植地の友人。営業日は、「気が向いたとき」という〃気まぐれ〃バーだ。
 基本的なカクテルはもちろんだが、大半がオリジナル。「レセイタを覚えるのが面倒くさくて」と照れ臭そうに笑う。
 「ヤマには人が少なくなった。入浴後、食堂には誰もいなくなってしまうので、溜まり場を作りたかった。初対面の人と話すのは苦手だが、みんなが楽しんでもらえるのが何より嬉しい」と胸の内も明かす。
 昨年12月25日にあった『弓場のクリスマス』には内外から多くが農場を訪れた。時計の針が0時を回った頃、店を開けた。バレエ公演を見に来た日本人も交えて大盛況。夜明けまで賑わいを見せた。
 記者が「今の気分は?」と尋ねると、「王様になった気分。俺がいないと誰も飲めんからね」と満面の笑みを見せた。