ニッケイ新聞 2010年1月22日付け
中央銀行は20日、多国籍企業の営業益や配当金の送金が激増したことで、09年12月におけるブラジルの経常収支は59億4千万ドルの赤字で1947年の統計開始以来最悪の結果だと発表したことを21日付けエスタード紙が報じた。多国籍企業は業績好調だが、利益を留保せず過去最高の53億2千万ドルを国外へ送金した。09年の直接投資は259億4千万ドル入ったが、年間を通じた経常収支は243億4千万ドルの赤字であった。中銀は10年に状況逆転を見込んでおり、心配には及ばないという。
09年の経常収支の赤字は、ブラジルもリセッションを経験した上半期を中心とした経済活動に、国際的な金融危機の影響が出たものだが、12月の大幅赤字は、ブラジルの対外赤字が急速に拡大する傾向を明確に表し、ブラジル経済の本質が試されている。
ミング経済研究所は、この現象を次のように見ている。赤字が予想外に大きく、10年、11年と赤字幅増大が見込まれるので、関係者を慌てさせた。多国籍企業は外国で資金を借りてブラジルへ投資したので、利益を送金するのは当然。
しかし、これが続いたら、ブラジルはどうなるのか。ブラジルは他人の褌で相撲をとっているのだ。経常収支とは、貿易収支とサービス・所得収支、移転収支の3勘定で国際間の歳出入の核をなす部分。
それが赤字になったということは、収入よりも支出が大きいのだ。個人の家計なら、収入以上の贅沢をしている。札束を見ると、使ってよいかいけないか考えず、ルーラ家はばらまいた。
09年の赤字は243億4千万ドル。08年の281億9千万ドルより14%少ないが、それでも使い過ぎ。国外からの直接投資259億4千万ドルが、赤字分を埋めてくれた形だ。
この状況は、かつてモラトリアム宣言を行った頃と同じだが、ブラジルでは、赤字は珍しいことではなく、どこかで借りて穴埋めすればよい。短期の借金での穴埋めなら化け物にいつ呑み込まれるかと悩まされるが、直接投資のような長期資金で経済を固めるなら慌てることはない。ただし、直接投資は、利益送金を織り込まねばならない。
中銀は10年の経常赤字はさらに増え400億ドルと予測するが、直接投資も450億ドル入ると計算。一方、金融市場は中銀より悲観的で、10年の経常赤字455億ドル、直接投資371億ドルと予想し、両者の差をどうやって埋めるかを懸念している。
また、大統領選立候補者達がどんな経済政策を胸に秘めているかも問題だ。世界的な動向を見極め、中長期の経済活動を見通した政策を立てないと、ブラジル経済の安定成長を危うくする。