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亜国=猪又造園技師に経営者技能賞=東京農大校友会が祝賀会=祝杯あげ〝大根踊り〟披露

ニッケイ新聞 2010年1月22日付け

 【らぷらた報知】猪又康夫造園技師が「東京農大経営者フォーラム 2009」で経営者技能賞を受賞したことから、同校校友会アルゼンチン支部では祝賀会を去る12月20日正午より、エスコバールのCasa Francoで催した。集まったのは猪又さんの家族に、校友会支部員は20名いるが、年末でスケジュール調整が難しいため,6名とその家族、久木テルモさん夫妻、広瀬哲哉エスコバール花祭り協会会長と家族、山脇ユカ・メルコフロール花卉組合支配人、その他交友関係者など家族ぐるみ30名近くの参加があった。会場は猪又さんの友人で同じ造園技師フランコさんの広大なキンタだった。
 東京農大は、北海道開拓に携わった榎本武揚が国内農業の発展を目指して、1891年に設立した。「実学主義」を基礎におき、これまでに14万余の卒業生を出しているが、農林業の自営をはじめ、関連する多彩な産業界の経営者、技術者などとして国内、東南アジア、北南米など幅広く世界をビジネスの舞台として活躍している。
 アルゼンチンでは大先輩として高市茂(前身の東京高等学校出身)のほか、伏見真次郎、杉田俊夫氏らがいる。
 長年同国で造園技師として多くの日本庭園を手がけてきた猪又さんは、樹木の移植に関しても大きな功績を残している。今回の経営者技能賞は、「農の物作り技術」の大切さ、その継承が重視され、新たに表彰項目に加えられたものである。
 祝賀会では、まず加賀見真務会長より、「猪又先輩は技術者として認められていたが、今回の受賞はアルゼンチンに対する貢献度も大きいことが反映した。それを支えているのが奥さん。農大校友会パンアメリカ大会が来年9月にブエノスアイレスで催されるが、その際にはご協力をお願いしたい」と挨拶があった。
 つづいて猪又技師は「私に当てはまる賞ではないが、これから若い人たちが対象になる。日程が詰まっていて、日本へ駆け足で行ったが、あわただしく前夜祭、歓迎会、そして授賞式。アルゼンチンから3人行った。簡単に考えて行って用意してなかったが、受賞後は講演し、すごい歓迎があって、農大ブレーンと一緒に特別扱い。友人や仲間、久木テルモやそのお父さん、広瀬哲ちゃんが自分に付添ってくれ、支えてくれて、私の部分を残すことが出来た」と述べた。
 あと、立食パーティーに移り、根岸正勝さんのアルパ・パラグアージャの演奏、非日系人グループのバイレ、さらに農大スタッフによる「大根踊り」が始まった。本来は両手に大根を持って踊るもので、1923年から伝わる東京農大の象徴ともいえる応援歌で、農大生が集まれば現在でもいろんな場面で歌い、踊るという。
 今回大会に出席した間山さんによると、「眠っている学生を目覚ますような講演で涙が出た。アルゼンチンには自分が先に来たが、彼はゼロから始まった人。日本の造園技師は図面引くだけ。彼は常に現場にいて、日本にいる人には想像も出来ないことをやっている.私にとって兄貴みたいなもの」。
 「大学では茶道部にいたが、着物に荒縄を締めた豪快で繊細な先輩」と加賀見さん。とにかく「私欲のない人」で、ガイジンも含めてフアンは多い。
 日本で、世界で「ハードからソフトへ」「重たい、厳しいものから手軽なものへ」と傾向が移り、文化も文化産業としてビジネス化していく中で、猪又造園技師が長年積み重ねて来たものは、ずしりと重たい。今回の受賞は母校が外国で、移住先で示された「実学主義」を、改めて全面に押し出した形になった。