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コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2010年1月22日付け

 コロニア・ピニャールに知る人ぞ知る青年図書館という施設がある。天野鉄人氏(同地在住)の手によるものだ。
 未開封の段ボール箱も無数に眠る。蔵書数でいえば、文協の図書館より多いのは間違いない。
 自然に恵まれた環境は読書に最高だが、コラム子には鳥のさえずりと共に、本の叫び声が聞こえるような気がした。
 天野氏の経済力と情熱には感心するが、読まれなければ、存在しないのと同じだ。世代交代が進み、活字の亡霊は各地で見られるのだろう。
 先日、生前お世話になった人の家族から、蔵書を引き取って欲しいという連絡があった。
 日本語が読めない家族にとっては無用のもの。だが、愛書家だった故人への思いを強く感じた。
 丁寧にビニールカバーで覆われている本を一冊ずつ眺めながら、「積ん読」にしないよう自分を戒めている。  (剛)