ニッケイ新聞 2010年1月27日付け
エルサレムを公式訪問中のジョビン国防相は24日、ハイチへ派遣している国連平和部隊の指揮を採るブラジル軍を治安維持目的から社会構築目的への変更を要求したことを25日付けエスタード紙が報じた。目的変更は30日、アモリン外相と国連の軍事担当官と行政担当官の間で協議される。現地では、治安維持のための社会組織構築も含まれるとする国連治安部隊総司令官フロリアノ・P・ヴィエイラ少将(伯軍)の主張と、米軍は国連の指揮下にないとする米軍のキーン司令官の間で異見の応酬が生じている。
ハイチ派遣の国連平和部隊の派遣目的は、震災の発生によって事態に変化が生じた。治安維持だけでなく、国家が機能するためのインフラ再建も必要であることは、自明の理だというのだ。
国連憲章によれば派遣目的の変更は、安保理によって決議されるとなっている。国防相は、平和軍部隊の派遣目的変更を震災以前から、何度も提言していたという。政府は安保理へ直ちに、公式の申請手続きを行うよう国防相が進言した。
震災以前の国連平和部隊の駐留期限は10月を以って終了となるはずであったが、ハイチの平和維持は単なる市民の平定だけではない。社会組織の構築にあると、国防相はかねがね考えていた。
ハイチの平和維持には、安定した経済と市民が収入を得る雇用も創出する必要がある。それには、学校の建設と国民の教育からやらねばならない。外務省は非公式に、平和とは市民の制圧だけでは片手落ちだと、国連に警告したという。
一方、震災地では多数の国々から救護班や軍が復興作業に駆けつけた。その中で米軍はオバマ米大統領の命令で、必要とされる間無期限滞在を命じられ、事実上の総指揮官だというのだ。
豚と人間が共同生活し、ゴミはあらゆる所に散在し小屋がけする最大のスラム街シテー・ソレイルでブラジル軍と米軍が食糧や飲料水を配布した。言葉は通じず無秩序の共同作業であった。
司令官同志で話し合ったが、物別れになった。ヴィエイラ伯司令官は、17カ国の国連平和部隊7千人の総指揮官であるが、米軍は国連指揮下を拒否。食糧は予定日より3日前、大統領官邸前に荷降ろしされ、米軍が独自に市民へ配布した。
キーン米司令官によれば、「国連の食糧配布は米政府の協力あっての配給であって、それなくしてハイチに救援物資が届くことはない。ブラジルには優秀な軍人がいるだけだ」という。