ニッケイ新聞 2010年1月27日付け
笠戸丸から103年目の今年、ブラジル初の日系上院議員が誕生しそうだ。マット・グロッソ州シノップ市在住の医師柳井ジョルジ氏(Jorge Yoshiaki Yanai、DEM)だ。北パラナのバンデイランテス生まれの二世で日本語もしゃべるという、最近珍しい日系政治家だ▼米国には少なくとも2人の日系上議がいる。ダニエル・イノウエ米国上議(1963―現在まで)とスパーク・マツナガ同上議(1977―1990年)だ。二人とも有名な日系人部隊、第442連隊出身。日本人差別の裏返しとして血と涙で手に入れた尊い議席といえる。南米ではチリに日系3世の大南(おみなみ)カルロス上院議員がいるが、それ以外聞いたことがない▼ブラジルの上議選挙制度では、州人口に関係なく全27州1直轄区に3人ずつ、つまり全伯に81人しかいない。任期は8年間あり、大統領選挙と同じ時に3分の1、もしくは3分の2が入れかわる。上議選挙は第1補欠と第2補欠が連記名簿になっており、欠けた場合は同じ名簿から後継が選ばれる▼柳井氏は第2補充だったので就任する可能性は高くなかった。02年に当選したジョナス・ピニェイロ上議がたまたま多臓器不全で08年2月に亡くなり、第1補欠のジルベルト・ゴエリネル氏が就任したが、党内の話し合いで、政治家としての経歴にハクをつけるべく柳井氏に順番が回ってきたようだ▼北パラナ生まれの二世の多くは麻州開拓に入った。その一人が栄誉ある議席を占めるようになるのは、日本移民百周年後の新展開にふさわしい。サンパウロ市でも祝賀会を行い、日系社会全体で喜びを分かち合いたい。(深)