ニッケイ新聞 2010年1月29日付け
米国のエール大学とコロンビア大学が行った調査によると、ブラジルでのオゾンによる大気汚染は163カ国中160位で世界でも最悪と28日付エスタード紙が報じた。
同調査では、オゾンによる汚染の他、森林破壊率113位、国民一人当たりの地球温暖化ガス排出量143位と、厳しいい結果が出ている。
それでも、総合評価が63・4ポイントで62位に終わったのは、発電の主力が温暖化ガスを排出しない水力だからで、炭素ガス排出阻止率は15位。ただし、総合評価も、08年発表の82・7ポイントで35位という結果より悪化した。
調査報告では、BRICs諸国は人口も多く、大気汚染が拡大しているにも拘らず、国の対応が遅れているとも指摘。
09年12月のコペンハーゲンでのCOP15(国連気候変動枠組み第15回締約国会議)には、法定アマゾン伐採を80%、セラード伐採を40%削減し、無対策のままなら20年に排出されるはずの温暖化ガスの36・1~38・9%削減という目標提出のブラジルだが、具体策は未展開。現実に進む大気汚染は深刻な問題だ。
特に、オゾンによる急性中毒は、目や呼吸器への刺激、咳やめまいなどを引起こし、高濃度になれば呼吸困難や麻痺、死に至る事もあり、慢性中毒でも、倦怠感や神経過敏など、神経系や呼吸器系の異常が起きる。
サンパウロ州でのオゾン汚染の事は18日付エスタード紙も報じているが、09年にオゾンが許容濃度を超えた日は、警戒レベル54日を含む271日。各々45日と202日を記録した08年と比べ、サンパウロ州でのオゾン汚染は34%悪化した事になる。
オゾン発生源となる酸素や窒素、炭化水素などは、太陽の光で化学反応を起こし、有毒ガスを形成。発生防止には車両走行量削減が最善だが、08年1月のサンパウロ市で590万台だった総車両数は、09年末には670万台に増え、車両数を減らす事は不可能に近い。燃料窒素削減も実施が遅れ、有効策は皆無の状態だ。
人口は増え、牧畜や農薬使用も多いブラジル。化石燃料利用削減などの対策を早急にたてなければ、健康問題で苦しむ人々も増え続ける事になる。