ニッケイ新聞 2010年1月30日付け
「治山治水」は経綸の要諦とされるが、これは難しい。市内のチエテ改修にも批判があったりしたが、江戸時代に濃尾平野で宝暦治水というのがあった。幕府の命令で薩摩藩が実施した治水事業である。木曾・長良・揖斐3川の水対策だが、家老・平田靭負が藩士ら947人を引き連れての難工事であり、幕府に抗議して藩士の切腹が多く51名が死に平田も工事が完了した後に辞世を遺し割腹している▼ここブラジルも昨年9月頃から豪雨が降り始め今に続く。先日は近郊のイタペビで山肌が崩れ街道を真っ二つに分断し大騒ぎになったけれども、この程度の惨事はリオでもあったし、大雨の被害は全国的に広がっている。あのペルーのマチュピチュ遺跡も雨のため2000人かが孤立し邦人観光客も多数が閉じ込められたし、首都リマの街路も水浸しだ▼いや、南米だけではない。中国は史上初の大雪だし、北米も寒波と豪雪に悲鳴を上げ、豪州は熱波に襲われ数百便の列車が運行停止している。気温が44度を超したので線路が機能しなくなったからであり、これでは関係者も泣くにも泣けまい。ポーランドでは寒さで80人もが草葉の陰に追いやられたし,英国でも多くの市民が死んでいる。中国の新疆では家畜が1万匹も凍死ー▼これはもう異常である。どうやらペルー沖のエルニーニョ現象の影響らしく、カリブ海もおかしいの見方もあるし、恐らくーこの雨降り異変はここ暫くは続くのではないか。と、薩摩藩の平田家老たちの義挙と辛苦を振り返りながら「治山治水」の大切さを改めて噛み締めたい。 (遯)