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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年2月16日付け

 遠いサルバドールからも激烈なレピニッキの響きが聞こえてきそうなカルナバルがやってきた。ラテン語の「肉よ さらば」が語源であり、ゲルマン人の春を祝福する祭りに由来する。これがキリスト教に入りドンチャン騒ぎとなり、大賑わいの都市も少なくない。ボリビアのオルロやモンテビデオ(ウルグアイ)もなかなかに捨て難い味があるそうな▼勿論、ヨーロッパが起源だし、古くからの伝統は今に続く。170余もの運河と橋梁400超を誇るヴェネチアの仮面舞踏会は真に面白い。あの仮面は日本の能面のようにちょっと見ると陰鬱な印象が強いが、能装束とドレスなどを着て演者や市民が動きだすとーそれぞれが個性的な魅力に満ちており、表情が素晴らしく豊かになってくる▼これはドイツも同じようでヴォルフッハ市もやはり仮面をつけた人々であり、昔からの伝承に違いない。いや、これはリオでもそうらしく、若き日の三島由紀夫が舞踏会に参加し、話題になったの話を聞いた。紋付と袴の着物姿で椅子に座っていたそうだが、ご婦人に大いにもてはやされたとも。こんなリオの風俗を描き、確かー「不満な女たち」だったかの小説を発表し、コロニアで話題になったと先輩移民は大いに語るのだがー▼ただしーこの舞踏会は庶民派というよりは、ハイソサエティーの享楽であり、一般的なものではなかったらしい。白状すると、イタリアの仮面舞踏はDVDで見たものだし、独は写真だけれども、リオやサンパウでも行われているものなら是非とも拝見したいものである。(遯)