ニッケイ新聞 2010年2月19日付け
パラグアイ政府は17日、同国で要人誘拐を犯し、ブラジルへ逃亡した自称左翼テロリスト3人の身柄引渡し要求と外交圧力の行使を表明と18日付けエスタード紙が報じた。3人は地下組織パラグアイ人民軍(EPP)のメンバーで、アヌンシオ・M・メンデスとフアン・アロン、ヴィクトル・コルマン。同3人はコロンビアのFarc(コロンビア革命前線)とも接触があり、テロと誘拐拉致を常習していたとルーゴ政権は訴えた。
3人は2004年、ブラジルに政治亡命者として保護されたという。EPPは過去数年、数々の恐喝や強盗、社会撹乱を犯したとパラグアイ政府が報告した。
同グループの犯罪の一つは、02年2月のマリア・D・ボルドン氏の拉致。64日間にわたる監禁の後、30万ドルで解放。05年には、ラウル・クーバス元大統領の息女セシリア・クーバスさんの殺害。10年1月は地主フィデル・サバラ氏の94日間にわたる拉致。その後、55万ドルで解放などがある。
被害者の証言によれば、幽閉中はFarcの拉致被害者と同じく、地面に掘った穴に放り込まれていたという。
ルーゴ政権は、EPPメンバーの拘束協力者に1人当たり5億グアラニー(10万7千ドル)の懸賞金を約束した。ブラジルへの政治亡命はジュネーブ協定を順守しておらず、どのパラグアイ逃亡者も政治亡命に該当しないと抗議した。
ルーゴ大統領は、パラグアイにも民主制度が敷かれ、犯罪人は正規の裁判を受け、人権が保障されると言明。ブラジル滞在のパラグアイ政治亡命者の見直しを、ルーラ大統領に要請した。
他にもパラグアイ議会のオスカール・ダーヘル議長が、タメル下院議長とサルネイ上院議長、トゥーマ・ジュニオル法務次官に逃亡中の政治亡命者見直しを要請した。
一方、パラグアイ野党のコロラド党や自由党は、政府のEPP取締りが緩慢で手ぬるいと非難。05年に起きた地主サバラ氏の誘拐犯は、未だに捕まっていないと当局の怠慢を糾弾した。
EPPの被害が多いのは、同国中央北部とされる。パラグアイ当局の話では、EPP幹部がブラジルで亡命者として保護されながら、組織の指揮を採っているという。
EPPの壊滅には、ブラジル国内のEPP狩りから始めるパラグアイ政府の考えのようだ。身柄引渡しを要求した3人は、パラグアイでの政治活動はなく、プロの誘拐下請け人だというのだ。