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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年2月23日付け

 北朝鮮が飢餓に瀕しているというので韓国や日米などが大量の食糧を支援したが、どうも国民の手に届いていないの疑いが強く調査団を派遣したことがある。韓国辺りでは、救援食糧はミサイルに化けたーの報道もあるし、災害や貧困を助けようとする動きは大いに結構なのだが、こうした善意の物資やカネが被災者や暮らしに困窮している人々の手に本当に渡っているのだろうかー▼日本のほとんどの人は「渡っている」と答えるだろうが、この認識はどうも間違っているらしい。曽野綾子さんが雑誌「本の話」に連載している「朝はアフリカの歓び」で「(前文略)世界は泥棒だらけなのだ」とし「一番大々的に、人の金を平気で懐にするのは、一番エライ人だということになっている。つまり一国の大統領か首相である」と書き、「渡っている」に疑問符をつけている▼この閨秀作家は、文学作品もだが、著名なルポ「集団自決の真実 日本軍の集団自決命令はなかった 沖縄戦争・渡嘉敷島」の著者である。日本財団の前会長でアフリカや南米にも旅し、こうした慈善活動の成果を実際に視察し、多くの問題も指摘している人である。そしてー曽野さんは、政府間の支援引渡し式には受け取り国側の厚生大臣らが立会う模様を述べながらー結局、救援物資は政府首脳や官僚に着服される事柄をさながら細密画のように描く▼この曽野さんの文章を見ても、とても信じ難い。日本人の1人として、こんな国が本当にあるーとは。だが、これはお人好しの典型であり考えであろうし、世界には「変な国」が多いのだと、頭に叩き込むのが先なのかもしれない。(遯)