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闘病者に命と開放の希望=09年の臓器提供26%増加=術者養成や啓蒙まだ不足

ニッケイ新聞 2010年2月24日付け

 ブラジル臓器移植協会(ABTO)によると、移植用臓器提供者が、09年に08年の1317人から26%増え、1658人となったと22日付伯字紙が報じた。この数字は過去最高で、人口100万人当たりの臓器提供者数も、7・2人から8・7人に増加。目標の8・5人を上回った。
 臓器提供者増加により移植手術も増え、待機患者最多の腎臓では、手術数が前年比12・5%増の4259件。肝臓移植と共に、年間目標値を超える事が出来たという。
 ただ、100万人当たりの8・7人の臓器提供は、100万人当たり36人のスペインや26人の米国に比べるとまだ低く、6万人超の待機患者数にも遠く及ばない。
 臓器移植には、脳死者から摘出した臓器の移植と、生きた人が提供する臓器の移植があるが、脳死臓器移植の場合、家族の同意が得られない、摘出前に心停止が起きた、脳死者の健康上の問題で臓器が使えないなどの問題も起こり得る。
 また、臓器提供への賛同者は6割もいるにも拘らず、臓器提供には地域差も大きく、サンタカタリーナ州の100万人当たり19・8人や、08年の12・2人が09年には17・5人に増えたサンパウロ州に対し、北伯ではアクレとパラーの2州での脳死臓器提供のみ。08年比で提供率が減った州も4州あった。
 また、臓器保存や効率的利用の面でも問題があり、09年11月26日付フォーリャ紙は、国内の肺利用率は、世界平均の3分の1で5%のみと報道。摘出の遅れや判断の誤りで臓器が使えなくなる事が原因だという。
 そのような意味で、臓器摘出や移植手術に当たる術者養成や、広く協力を仰ぐための啓蒙が必要だが、5年間人工透析を行っていた人が移植後は普通の生活に戻った例が22日エスタード紙、サンパウロ州内摘出の角膜で視力を取り戻した人が北、北東伯で50人以上という記事が1月7日付フォーリャ・サイトなど。
 肺機能低下で2歩と歩けず、死も覚悟していたエンリッケ・ブスナルド君は、12歳の時、両親の肺葉を一つずつ移植。10年後の今はサッカーも出来るなど、新たな命と医療機器からの開放を待つ人はまだまだ多い。