ニッケイ新聞 2010年3月9日付け
カルナバルが過ぎると秋色が濃くなり朝や夕べはちょっと冷え込む。蒲団も夏物だけだと暁闇には寒く、毛布がもう一枚欲しい。セーターや薄い上着があると助かり、路傍の草々も秋らしさを強め、編集局の側を走るミニョコンに咲く紫紺野牡丹の紫の色も美しい。かなりの喬木で15本ばかりあるのだが。ガルボンの大阪橋からの眺めがとても素晴らしい▼海岸山脈を彩るクァレズマも今を盛りと咲き誇り、山を上り下りする人々たちの眼を奪う。赤紫と白の花が入り混じった山並みの風景は見事なばかりの眺めだし、心までもが踊る。もっとも、我々はひと口に「クァレズマ」と呼ぶが、これには230種を超える木々があり、それぞれに名も異なるそうだ。所謂 四旬節の頃に花が開き始めるので「クァレズマ」の名を付けたらしい▼もう40年ばかりも昔にサ紙の編集長・内山勝男氏と細江静男医師にくっついてカンポスに行った。ヅットラ街道から左に折れての山道にも、紫の花が歓迎してくれ同行の同僚が「これは失恋の花」と語ったのを今も忘れない。嘘か真かは知らないが、確かにあの赤紫の花びらは物悲しく「失恋」がよく似合し、道庵先生の細江さんが主唱のボーイ・スカウトを訓練した所の跡に向ったのも楽しい▼3月の末ころだったろうが、カンポスはもう寒い。その山奥の頂上に訓練所跡があり、懸崖の向こうはミナスの険しい峰だし、厳寒を防ぐのは大きな暖炉で赤々と燃える太い焚き木の頼もしさ。このときに「Lareira」を覚えたし、受難の苦しみの四旬節でもーこんな微笑まくも懐かしい思い出もある。(遯)