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伯米貿易戦争が始まる=綿補助金への報復=米製品102品目に課徴金=奥の手は知的所有権か

ニッケイ新聞 2010年3月10日付け

 ブラジル政府は8日、世界貿易機関(WTO)が認めた、米政府の綿補助金への対抗措置として米製品の輸入に対する報復関税の実施を発表と9日付けエスタード紙が報じた。消費財を中心とする102品目の課税対象となる米製品が、30日以内に官報で発表される。米製品リストには、自動車や食品、農産物、電子製品、化粧品、繊維、衣料品などが見られる。庶民の生活に最も影響のあるのは小麦、08年には3億1800万ドルを米国から輸入した。

 産業への影響は少ないが、政治への影響は大きいようだ。政府は、米国の補助金に関する反応を見守っている。ホワイト・ハウスのフロマン国際経済担当官は9日、イタマラチ宮へ米政府の意向を伝えるようだ。
 当国の報復は、米製品5億9100万ドルに課税され、消費を抑圧する。報復行為がもたらす影響は、先でさらに膨らむ。事態悪化の場合、米国の急所である知的所有権に2億3800万ドルの報復をする切り札が、ブラジルにある。 
 WTO裁決では消費財で5億6千万ドル、その他、知的所有権やサービスなど合計で8億2900万ドルの報復であった。WTOの歴史では、2番目規模の報復。
 米政府から打診は多数あるが、確定的なものはない。ブラジルも面白くて報復するのではない。妥当な国際貿易の実施を願うだけ。伯米間は8年にわたった裁判闘争があるため、ケジメは一朝一夕にいかないようだ。
 伯米貿易戦争の本番は、知的所有権にありそうだ。政府は米製品の値上げではなく、知的所有権で米経済に揺さぶりを掛けようと考えている。特許料支払拒否やロイヤリティの送金停止が、効果的と見ている。
 米製薬業界は、特許料支払拒否を非常に恐れている。ブラジル政府による米系製薬会社からの特許薬品押収などが起きないように、米政府や米議会へ働きかけている。
 米政府に対して報復措置を宣言し、大上段に構えたのは、ブラジルが初めてのようだ。今回の報復リストは第1波。続いて2波、3波とある。しかし、ブラジル特許協会は、特許を係争の道具とすることに危惧感を抱いている。
 特許料支払拒否の合法化は、タブーとされている。過去に一度エクアドルが試みて、米国に一蹴された経緯がある。それが、ブラジルなら堂々と罷り通るのか。

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