国税庁の特権付与案審議=ブラジル近代化の登竜門=基本的人権侵害の声も=台帳システムの管理社会
ニッケイ新聞 2010年3月12日付け
政府が昨年4月に提出した税制改革の一環としての滞納債務徴収と抵当物件に関する制度案を、下院が近日中に審議開始と11日付けエスタード紙が報じた。国税庁の税監督官に、守秘権の免除や裁判所の許可なく家宅や企業の強制立ち入りができる警察権を与える。さらに個人の資産を微に入り細に入り調べ上げ、CPF(所得税申告番号)がないと、売ることも買うこともできないシステムを立ち上げる。ブラジル近代化のため、通らねばならない門だと政府はいうのだ。
上程報告者はジョアン・P・クーニャ下議(PT=労働者党)。OAB(全国弁護士協会)は、同案が国税庁に強盗まがいの行為を許すので、基本的人権の侵害に当たると抗議した。
下院は10カ月も寝たままにさせていた納税者の首に縄をかける同上程案の審議を開始する。特に国庫への債務や抵当物件の状況が、自動的に表示されるシステムの設置が関心事のようだ。同令によって個人のプライバシーは、はく奪される。
システムは、特に個人の金融資産へ目を光らせる。国税庁検察局の誕生で、連邦政府と州、市への債務も監視される。債務監視の対象となるのは、個人の場合、固定資産税(IPTU)や自動車税(IPVA)滞納が中心で、場合によっては、大中企業の場合も含め、担保物件の差し押さえも起こる。
反響は、ごうごうたるものだ。先ず財界やOAB、税務関係者などが、同令は全ての資産を国家管理に置くものだと異議を申し立てた。政府が司法手続きを経ずに強制執行とは、容疑者に弁護の機会を与えず処刑するようなものと批判した。
財界の反応は同案が国会で承認されると、「国民のための国家ではなく、国家のための国民」になるというのだ。
税務関係者は、国税庁が交渉の舞台になることを杞憂。同令の税務システムは、税金を逃れるために利用される。先ず大手が、前例を示す。中小企業が次々それに倣って、税金を免れる習慣が定着するという。
総弁護庁のアダムス氏は、同案を政府のためではなく、国家のためのものだと説明した。際限のない債務に歯止めがないのは、脱税者社会の奨励と保全だと批判した。