ニッケイ新聞 2010年3月13日付け
トメアスー移民の苦闘を描いた「アマゾンの歌」の作者で、「閔妃(ミンビ)暗殺」など近現代史をテーマとしたノンフィクション作品で知られる作家の角田房子(本名フサ)さんが1月1日に死去していたことが12日、分かった。95歳。東京都出身。共同通信によれば葬儀・告別式は近親者で済ませた。
フランス留学などを経て執筆活動に入った。丹念な資料収集と取材で、甘粕正彦ら軍人や満蒙開拓団などをテーマにした作品を発表。「責任 ラバウルの将軍今村均」で85年に新田次郎文学賞、日本公使が介在した朝鮮王妃暗殺事件を描いた「閔妃暗殺」で88年に新潮学芸賞を受賞した。ほかの著書に「東独のヒルダ」「悲しみの島サハリン」などがある。
ブラジル日系移民を題材にした作品も多く、アマゾン第一回移民が入植したパラー州トメアスー移住地の山田義一さん一家を中心に移住者の苦闘と成功を描いた「アマゾンの歌―日本人の記録」(1966年)は1979年にドラマ化された。そのほか、「ブラジルの日系人―新天地に生きる血と汗の記録」(67年)、「宮坂国人伝」(85年)などの著書がある。