ニッケイ新聞 2010年3月16日付け
ストックホルムの国際軍拡調査機関(Sipri)は14日、南米の兵器購入が過去5年に150%も激増、世界平均の22%をはるかに凌駕と発表したことを15日付けフォーリャ紙が報じた。同時期における同地域の軍拡競争は、世界最大で注目を引いているという。その中で特出しているのは、チリとブラジル、ベネズエラ。これまでブラジルが30位にあったが、次回発表で急浮上すると思われる。アモリン外相は、アマゾンの天然資源保護と岩塩層下油田の警備に備えたものと説明。
ブラジルの軍事費拡大は、アマゾンの天然資源保護と国境線の警備、岩塩層下油田の監視であって、ベネズエラとの軍拡競争ではないと、アモリン外相が説明した。最近はマルビナス諸島のような領有権の不確定なところでも、油田の試掘が行われている。
南米地域の軍拡は、世界規模で見れば小さい。しかし、急激に軍備拡充を急ぎ始めたことは、明らかに何かを意識して態勢整備に努めているとして注目を引いている。
南米の伝統的な紛争地域や最近突然起きた緊張の高まりだけで、軍拡機運が高まったのではない。ルーラ大統領が最近いうように、グローバル社会の中での発言を裏付けるような近代装備が求められたようだ。
ブラジルの兵器発注量は、地域で3番目の規模。世界では30位。チリは伝統的ライバルのペルーに備えて世界13位。ベネズエラはライバルのコロンビアを意識して世界17位。
ブラジルの兵器輸入は過去10年、余り動きがなかった。しかし、世界各国の兵器購入が急増し、刺激された。近隣諸国はブラジルのように天下泰平ではなく、最新鋭戦闘機の更新に走った。
同機関調査部は兵器取引の実態把握で、混沌としている中南米事情に神経を尖らしている。同地域の政府間には、軍拡競争で信用を裏付ける対話が欠けるという。これからの緊張は地域に留まるのか、総力戦というものがあるのか不明。
世界の軍拡の中で南北米の軍事費は、米国を入れて、世界の11%とまだ小さい。トップはアジア大洋州の41%。軍備に最も力を入れているのは、中国やインド、韓国、アラブ首長国連邦など。常に軍備強化に励み、油断がない。
最近販売された兵器の27%は、戦闘爆撃機。兵器取引の30%は、米国製。続いてロシアが、23%を占める。以下3位が、ドイツで11%。4位がフランス、8%。5位英国、5%だ。