ニッケイ新聞 2010年3月25日付け
発売前から予約が殺到し、社会現象ともなった小説『1Q84』の作家村上春樹氏の短編に35歳を人生の折り返し点に考えた男の話がある。元水泳選手。ターン毎に、残りのぺースを配分してきた。それを人生になぞらえ、健康管理を始めるきっかけにする▼コラム子もちょうど35歳になった。元ブラジル移民のアントニオ猪木氏に「元気があれば何でもできる」という名フレーズもある。外国に住んでいる自覚も含め、血液検査をすることに。結果からいうと、中性脂肪が高いということだった。平常値は40~130mg/dlというのだが、250ほど▼知人の男性には、「ゲテモノ食いを止めたらいい」と呵呵大笑され、「自分は800あった。知り合いは1400で倒れた。まだ若いし大丈夫だ」と励ましのお言葉を頂いた。一応、ネットで調べてみると、糖尿病や脂肪肝を引き起こし、最終的には脳梗塞や心筋梗塞になり得るとか▼何といっても食生活と運動が大事らしい。カツはヒレよりロース。焼き鳥は鶏皮、フェイジョアーダは耳と足。大のビール党でおつまみは豚の脂を揚げたトレズモが好物。ゲテモノ食いとは思わないが、確かに体に悪いかも知れない。運動はともかく、食生活から改善すべきだろうか▼そんなおり、精進料理専門家の取材で「肉は食べなくても生きていける。野菜を主役にするのが理想」と聞き、天の啓示かとも思った。しかし件の知人は今年古希。スタート地点に戻ったわけだが、「満身創痍」と自嘲しつも、まだ元気に杯を傾けている。折り返し点を数年先延ばししてもいいかな、と思う自分を戒めている。(剛)