ニッケイ新聞 2010年3月31日付け
ブラジルを代表する霊媒の一人、シッコ・シャビエル(1910~2002)を描いた映画『Chico Xavier』が完成し、その生誕百周年を祝って4月2日から公開されるにあたり、その業績を再評価する記事が連日、伯字紙をにぎわしている。復活祭(パスコア)の週末の話題をさらう話題作となりそうだ。
ポ語ウィキペディアの同氏の項によれば、死者の声を自動筆記する霊媒として451冊の本を出版しており、うち39冊は死後に出されているにも関わらず、本人は「あくまで精霊がしゃべったことである」として、一冊も「著者」であることを認めていない。
同じ理由で、計5千万冊も売れている本の著作料を受け取っていない。義務教育も終えていないが、1932年に刊行された初の詩集以来、平均年6冊の〃著作〃をしてきた。最も売れた作品『Nosso Lar』(1944年)は通算200万部も販売した。この収入はすべて心霊教会に寄付され、本人は死ぬまで教会から提供される質素な生活をミナス州ウベラーバ市でしていたといわれる。
ポ語以外にも英語、スペイン語、日本語、イタリア語などにも翻訳され、世界的にも心霊関係では認知されている。
映画の原作となった小説は、ジャーナリストのマルセル・ソウト・マイオル氏が書いた『As Vidas de Chico Xaivier(シッコ・シャビエルの生涯)』(Editora Leya)で映画に合わせて今月発売されたばかり。監督はダニエル・フィーリョ、シッコ役はネルソン・シャビエルなど、3人の俳優により3つの年代に分けて描かれる。
29日付けエスタード紙で同監督は、「みんな真面目一方の映画と期待しているようだが、そうはならない。彼は聖人であると同時にただの人間でもある。どのように、一人の人間があのような〃世界の果て〃で生まれ、愛のメッセージを広く発信するようになったかを描く」と説明する。
なお、この映画は同監督が長く関係するグローボ関連の制作であり、26日晩の人気番組「グローボ・レポルテル」でも「シッコは熱心なカトリック信徒であり、聖人に祭り上げる動が起きている」など報じるなど、あらゆる番組で関連報道、宣伝をしている。
同監督の前作『Se eu fosse voce 2』(09年)は610万人を動員し、この20年間の国産映画の記録を塗り替えた。またプロデューサーとして参加した『2 filhos de Francisco』では530万人、『Cidade de Deus』でも340万人と、ブラジルが誇るヒット作品制作者として有名だ。同紙の取材に対し、「100~150万人の観客動員を見込んでいる」とし、同紙は「かなり控えめな予測」としている。