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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年4月6日付け

 江戸の頃に雷電為右衛門という力士がいた。身長197、体重172キロの巨体。土俵暮らし21年。江戸本場所35場所で喫した負け星が僅かに10。253勝10負2分。14預。5無勝負。勝率9割6分2厘の強豪である。史上、最強の力士とされるが、戦後にも「怒り金時」の大関・名寄岩が、糖尿病で注射をしながら土俵に上り、星勘定は芳しくないが大の人気であった▼この後にも琴ヵ浜という大関がいて内掛けの達人。この特技で土俵とフアンを沸かせたものである。そして―春場所の隠れた金字塔は、東張出し大関の魁皇である。幕内100場所を達成。幕内戦歴823勝を記録したのを受け内閣総理大臣顕彰が決まったのだから魁皇の歓びは大きい。近頃は「クンロク」が多く、春場所は8勝7負とやっと勝ち超したが、これまでに5回も優勝杯を手にした兵なのである▼中学生のときに握力が100を突破する怪力を誇り「左四つ右上手」からの上手投げと小手投げを武器とし、横綱まであと一歩に近づいた。が、腰痛や大腿の怪我が重なり、ここ数年は黒い星が目立つ。それでも、ここ一番には強い。大関に昇進して9年と少し。この座を守ったのには仰天する▼曙、若乃花、貴乃花と入門が同期。只今37歳。顕彰を伝えられると「びっくり」「負け数が多く」と語り「でも―応援してくれる人がいっぱいだから」と感謝も忘れない。このフアンへの思いやりが嬉しい。雷電は44歳の引退。名寄岩が40歳。魁皇さんーあと2、3年は頑張って「土俵に花を」。自らの記録をも更新して下さい。(遯)