ニッケイ新聞 2010年4月17日付け
【既報関連】15日にブラジルのルーラ大統領と中国の胡錦濤国家主席が署名した新しい合意書の内容が、15日付アジェンシア・ブラジルや16日付伯字紙に掲載された。ルーラ大統領がその挨拶で、現政権になってから780%も成長と言及した伯中貿易に止まらず、多岐に亘っての関係拡大を目指す総合計画は、共同行動計画の頭文字をとり、伯中〃PAC〃と名付けられた。
14日夜ブラジルに到着した胡錦濤主席は15日、伯中〃PAC〃調印を盛り込んだ、ルーラ大統領やアモリン外相らとの会談から、国内での公式日程を開始。貿易や外交政策に限らず、種々の投資や技術提供など、多岐に亘る合意の内容は、政府公式サイトでもポ語と英語で公表された。
09年第4四半期の国内総生産(GDP)成長が10・7%、今年第1四半期も前年同期比11・9%と驚異的な成長を遂げ、GDP額世界3位の中国が、国際的な発言力をいや増すのに倣いたいブラジルにとり、14年までの具体的目標などを盛り込んだ新〃PAC〃は、より密接な関係を印象付ける格好の材料だ。
ペトロブラスと中国石油関連企業Sinopecによる、パラー~マラニョン沖での開発投資と産出協力、原子力発電を中心とした再生可能なエネルギー開発、LLXとWisconによる製鉄所建設や鉄鉱石輸出や製鉄部門での技術・知識交換、交易など、他分野に亘る合意を行った両国。サンパウロ市などが参加する上海万博も、両国の文化交流と消費者情報の交換に役立つとされている他、現地通貨での決済など、今後の進展を期待する案件も含まれている。
また、09年は42億8千万ドルの貿易黒字を計上したものの、10年は2月までに8億7千万ドルの貿易赤字を計上中の対中貿易の中で、16日も続く、牛肉や煙草の輸出拡大につながる交渉への期待も大きい。
牛肉輸出では、中国側の公認企業数を5つから19に増やすよう求め、早期の視察団派遣も求めたブラジルに対し、中国側がどの様に対処してくるかが注目されている。
経済力などでは国際的に認められる一方、人権問題では批判も多い中国にとり、ブラジルの主要政党と同国共産党の交流なども盛り込んだ合意書が、国際世論をかわすのに役立つかは疑問だが、国連安保理の常任理事国入りなど、国際舞台での発言力拡大を求めるルーラ大統領にも、大きな弾みとなる事を期待させる新〃PAC〃といえそうだ。