ニッケイ新聞 2010年4月24日付け
2010年第1四半期の経常収支が、前年同期比145%増の121億4500万ドルの赤字を記録し、1947年の統計開始以来最悪となったと23日付エスタード紙や22日付フォーリャ・オンラインなどが報じた。3月の経常収支赤字も50億6千万ドルとやはり統計史上最悪を記録したが、中央銀行では、赤字増額には国外での投資増加など肯定的な要因も絡んでいる上、投資収支が順調だから心配は要らないと楽観視する立場を崩していない。
国際金融危機後の経常収支は、2009年4月にわずかな黒字を計上した後、11カ月間赤字が続き、3月の赤字は前年同月比225%増の50億6千万ドル、第1四半期では前年同期比145%増の121億4500万ドル、12カ月累計では315億ドルの赤字という数字は、素人目には大きな懸念材料だ。
だが、中銀ではこの赤字は経済発展に伴うものとの見方を示す。というのは、ブラジル企業の国外進出などに伴う国外支出も増えているためで、第1四半期に国外で受けたサービスに伴う支出は、前年同期比122%増の63億1千万ドル。
具体的には、石油採掘のためのプラットホームやクレーン車などの賃借料などが47・8%増え28億8千万ドルの赤字を計上。国外での雇用者への給与支払なども含めたサービス所得収支の赤字138億ドルは、国外進出増加に伴う出費というのが中銀側の理解だ。
また、貿易収支の黒字が、前年同期比70%減の8億9200万ドルという数字も、為替による数字の変化と国内消費加熱に伴う輸入増を反映したもので、その一部は、原材料輸入や施設増強などの肯定的部分だ。
国外からの直接投資などの見返りで生じる利子や配当金支払が、各々、30億ドル、45億8600ドルの赤字となったのも、肯定的な数字。
国外への旅行者の消費金額も急増し、3月は前年同月比81・5%増の11億2千万ドル。ブラジルへの旅行者消費は17・1%増の5億7790万ドルに止まり、3月に5億4340万ドル、第1四半期では16億8500万ドルの赤字。所得向上などの結果が国内消費以外の場所でも出たと見られている。
さらに、中銀関係者を楽観的にさせるのが、国外からの投資収支の動きで、経営権取得などに関わる直接投資が、前年同期の53億ドルを上回る56億5600万ドル。証券投資や金融派生品その他への投資も増え、直接投資以外の国外からの投資は、93億2800万ドルに及んでいる。
従来は直接投資で埋め合わせが可能だった経常収支赤字が、それ以外の投資収支の投入も必要となった今、金融政策の舵取りはより慎重である事が要求されるが、中銀では、経常収支の赤字は2011年も続き、数字の上での好転は2012年以降と予測している。