ニッケイ新聞 2010年4月28日付け
バイシャーダ・サンチスタ海岸に犯罪の波―。先週1週間に類似した殺人事件が20件以上も多発しているとされるサンパウロ州サンパウロ海岸地域の4市に関し、アメリカ政府が旅行を差し控えるよう危険勧告を出したと27日付フォーリャ紙が報じた。
今回、米政府が立ち入り危険区域として挙げたのは、一連の事件で騒がれるグアルジャーを中心にサントス、サン・ヴィセンテ、プライア・グランデの4市。サンパウロ州地域で立ち入り危険勧告が出されたのは、2006年以降初めてとなった。
グアルジャーでは18~20日にかけて6人が殺害されたほか、23日にサントスで女性1人が銃で打たれ死亡、サン・ヴィセンテでは20、21日に6人が銃撃を受けそのうち5人が死亡した。プライア・グランデでは、22日に元服役人が同じく銃で殺害されたと報告されている。
18日からの1週間での同地域の殺人事件被害者は20人を超え、被害者のほとんどは18~30歳の男性だという。
在サンパウロ米総領事館によれば、危険勧告は米防衛省の広報・海外渡航安全情報の中で公表されている。領事館に登録される旅行代理店にも、通達された。
同地域への観光客は米政府の勧告前から減少しており、グアルジャーなど地元観光業界では、相次ぐ予約キャンセルは、実態を知らない人々の動きだとの不満の声が挙がっている。
しかし、地域では一連の騒動から大きな不安が広がっており、グアルジャーなどでは学校の授業が中止され、商店も店を閉めた状態だ。
グアルジャーではここ2年間、殺人事件が増加傾向にあり、昨年は前年より17%多い53人が殺人事件に巻き込まれて死亡。1カ月に約5人が犠牲となっている計算となる。今年は、すでに30人が死亡している。
警察では同海岸地域での一連の事件の関係性を調べているが、グアルジャーでは6件全てが郊外のヴィセンテ・デ・カルヴァーリョ区で発生しており、犠牲者に軍警や軍警親族、市警勤務者など警察関係者が多いことから、犯罪組織の州都第一コマンド(PCC)による警察への報復ではないかとみられている。
サンパウロ州保安局によれば、同地域一体ではすでに特別警備体制が敷かれており、28日には軍警の特殊部隊も応援に駆けつけるという。