ニッケイ新聞 2010年4月29日付け
会社更生手続き中の日本航空(JAL)が28日(日本時間)、サンパウロ―成田便を含む国際15、国内30の計45路線を運休する新たな路線合理化計画を発表した。32年間日伯の空をつないだJAL便は9月末で運休、サンパウロ支店も撤退することになる。28日午後、小西弘恭・日本航空南米地区総括支店長が説明のため本紙を訪れ、「運休を決断せざるをえなかった」と無念そうな表情をうかべた。同社では早急に「窓口」を設置し、航空券販売に支障がないよう検討するという。
JALの発表によると、サンパウロ―成田便は9月30日で運休。27日夜のサンパウロ発ニューヨーク経由便が最終便となり、それに伴いサンパウロ支店も撤退する。
小西総括支局長は「ご利用頂いているみなさまには、ご不便をかけて申し訳ないと思っています。早急に窓口を決定し、誠意を持ってお客様への対応をしていきます」とのべた。支店が撤退した後の航空券販売は、現在検討中の「窓口」で今後も行われる。
同時に、今まで貯めたマイレージがなくなることはないと断言。今後に関しては、北米や欧州経由の乗り継ぎになるので、マイレージに関して各航空会社と交渉していくという。
同社の経営再建策の一環としてサンパウロ線撤退が取りざたされ始めたのが昨年9月。今年1月19日に会社更生法を申請、その適用下にある。国民や政府や債権者の納得するような再建計画を検討している最中だ。
今年2月にこれまでの週3便が2便へ減便されながらも、直行便の運行は続いていた。人員削減などと同時に、採算面から事業リスクが高いと思われる項目の洗い出しが行われ、計45路線の運休が決定された。
■記者の眼■予想される混乱も=期待したい運行再開
JALのサンパウロ路線運休のニュースを聞いた、さる日系旅行社のベテラン社員は「これで日の丸つけた直行便がなくなるのは本当寂しいね」と肩を落とした。
32年間、途切れることなく日伯の空をつないだ便が9月末でなくなる。日伯間の空の旅に変化をもたらしそうだ。
直行便なら2時間半程度だった乗り継ぎ時間は、今後は北米や欧州において5~6時間に倍増すると見られる。もちろん機内で日本語が使える機会は激減する。
混乱を呼びそうなのが、10月以降すでに企画されている訪日・訪伯旅行への対処だ。
サンパウロ市の大手日系旅行社によれば、JAL便を前提に企画された訪日ツアーの中にはすでに費用を集めているところもあるようだ。「(別な便に変えることで)運賃も変わってくるなど、影響は出てくると思う。こちらとしては説明するしかない」と関係者は話す。
JALが今後どの航空会社と提携するかによっても状況が変わってくるため、しばらくは不安定な状況が続きそうだ。
デカセギブームが終わって客足が激減したあと、大韓航空はまっさきにソウル・サンパウロ路線を運休したが、08年から運行再開している。しかも週3便だ。中国国際航空公司は09年12月から週2回、北京・サンパウロ路線を再開している。もちろん、ドバイ経由のエミレーツ航空の参入もある。
どうして、日本の航空会社だけが時流に逆行する事態になっているのか。国際競争力の問題なのか、それとも・・・。まるで、元気がない今の日本をそのまま象徴しているかのような出来事だ。
「日の丸の復活」という意味を込めて、4年後のW杯ブラジル大会までに、ぜひとも運行再開を期待したい。(深)