ニッケイ新聞 2010年5月6日付け
最低賃金一つ以上の年金受給者に対する調整率を巡る攻防で、政府が手痛い敗北を喫したと5日付伯字紙が報じた。09年12月決定の調整率6・14%を、今年1月にさかのぼって7・7%に変更するという案が4日夜の下院本会議で承認されたもの。同案は今後、上院に回されるが、上院でも7・7%調整案が採択されれば、大統領が拒否権を行使すると見られている。
1日付伯字紙も第1四半期の政府会計は281億5千万レアルの赤字と報じた様に、財政困難な政府にとり、年金調整率の引上げは、更なる経費の増加を意味する。
それだけに、選挙年と知りつつも、年金調整幅を抑えたかった政府の期待とは裏腹に、1月にさかのぼり7・7%調整という案が承認された事は、政府にとっては手痛い敗北。同案が上院でも承認となれば、連邦政府は今年18億レアル、来年以降56億レアルの経費増額を強いられる。
野党議員の中にも経費増加分をどこから補填するのかの提示もない調整率に引上げ懸念の声も出たが、今回の結果はある意味で予想されていた。
というのは、今の時点で年金調整率を引き上げれば、10月の選挙に向けての点数稼ぎとなると考える議員が多いため。
政府調整率6・14%に対し、労組などが7・7%調整案を打ち出したのが3月25日。その後の交渉で7%までならとの政府譲歩案が出たのが4月25日。4日付伯字紙でも7%での調整承認は暗黙の了解と報じた一方、投票では、与党内にも7・7%での調整を支持した議員がいた。
これは、調整率の最終抑制は大統領の裁可に任せ、自分達は年金生活者側にいるとのスタンス打ち出しに他ならず、7・7%調整案承認後、〃公的財務に対する無責任な行為〃との批判の声が出たのも無理はない。
景気回復に伴い税収回復とはいえ、借金に伴う利子が財政圧迫の政府にとり、新たな支出は頭痛の種。大統領裁可の時点で拒否すれば、10月の大統領選でのジウマ氏への影響も懸念される。
上院では早くから7・7%を承認する構えを見せており、年金生活者には期待のかかる調整率引上げだが、財布は一つの政府。経済活性化計画などの拡大、実施などを優先するか、年金生活者を優先するか。頭の痛い選択となりそうだ。