ニッケイ新聞 2010年5月8日付け
鳩山首相の沖縄訪問はなんとも情けない。仲井真知事との会談には、あの南の島に伝わる伝統の「ゆかりしウェア」を着て愛嬌を振りまいたのは、真に完璧な演技であり、褒めて上げたい。知事も「よく似合ってますよ」と笑顔を浮かべたけれども、首相の開口一番が「県外は難しい」であり応接室の空気は一挙に冷たくなってしまった▼それもこれも―首相の自業自得であり、口から出任せのような発言が生み出した結末と言っていい。軽口をたたくように普天間移設は「県外」と話すなど不見識が目立つ。今も辺野古の沖合いに杭を打ち桟橋を造り飛行場にするとの案を検討しているが、これは自民党政権のときにも持ち上がった計画だが、テロなどの攻撃に弱点があり見送られたの話もある▼沖縄には米軍基地が多い。日本にある米基地の70%超が集中しており、県民が「基地反対」と叫ぶ悲痛な声にも耳を傾けたい。しかし、日本を取巻く安全保障の問題で最も脅威なのは北朝鮮だし、中国の軍備拡大なのも事実なのである。こうした情況を考えれば、地政学的に見ても、基地としては沖縄が最適の見方も成り立つし、政府が県民に対しこうした説得をしてきたか?となると、疑問である▼鹿児島県の徳島へのヘリ部隊移駐も島民の80%が絶対反対。3町長が首相と会談したが、町長らの回答は「移駐拒否」だし、米国側も強い難色を示している。こんな事態を招いた首相の政治責任は思い。何の実もない議論?に8ヶ月近くも費やし日米関係に亀裂を生じさせる政治には、誰しもが呆れている。鳩山進退論が出るのも当然である。(遯)