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100億レアルの経費削減=インフレ高進懸念して=GDP成長は7%までに=遅過ぎと批判の専門家も

ニッケイ新聞 2010年5月15日付け

 3月に218億レアルの経費削減を発表していた政府が13日、さらに100億レアルの経費を削減する意向を発表したと14日付伯字紙が報じた。プライマリー黒字の目標達成と共に、国内消費過熱などに起因する経済成長が7%を超え、インフレが高進する事を懸念した処置というが、専門家からは、遅きに失したとの批判や、選挙対策との声も上がっている。

 政府の経済スタッフが経費削減を考えている事は13日付エスタード紙なども報じていたが、正式な選挙戦開始直前の経費削減第2弾発表が、期待通りの結果を呼ぶか否かには、早くも疑問の声が出ているようだ。
 マンテガ財相が、第1四半期の経済成長が09年第4四半期の2~2・5%増と発表したのは12日。年率8~10%の成長にあたる数字は、政府の経済スタッフや通貨政策担当者には、懸念材料を増やした様だ。
 新たな経費削減は、13日のリオ市でのインフレ抑制に関するセミナーで、中銀総裁のメイレーレス氏が、「(インフレ抑制のためなら)どんな支援も喜んで受け入れる」と発言した直後に発表された。
 通貨政策担当の中銀がとるインフレ抑制策は政策金利(Selic)引上げだが、マンテガ財相は、税収と支出の差であるプライマリー収支黒字でDGP(国内総生産)の3・3%という目標達成と、市場に注入する公的資金を抑える事で経済の過度の過熱を防ぐための支出抑制と説明。
 需給バランスがとれ、インフレ高進も回避できる成長率は7%以下で、政府支出の抑制は、中銀スタッフの負担軽減にもつながるという。
 ただ、専門家からは、経済は既に加熱しており減速効果は期待薄で、前年度の所得税が入る時期にプライマリー赤字を計上していてはGDP3・3%の黒字達成は困難との声もある。
 また、今回の経費削減は、選挙戦中の政策金利引上げを少しでも抑えるための苦肉の策で、政府には両刃の剣との声もある。大幅な金利引上げで不評を買い、野党候補のセーラ氏に中銀批判の材料を与えるより、経費削減でインフレを抑圧する方が与党候補のジウマ氏に有利に働くとの考えが働いたというのだ。
 経費削減の具体的な内容は明らかにされていないが、現政府の目玉政策であり、ジウマ氏の看板でもある経済活性化計画(PAC)や、PAC以上に知名度が高い住宅政策「ミーニャ・カーザ、ミーニュ・ヴィダ」への支出と生活扶助は削減対象外。憲法で確保されている保健省経費の削減もないから、最大の的は教育省予算となりそうだ。