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ルーラのイラン説得は成功か=合意成立で文書もサイン=それでもウラン濃縮継続=制裁発動は避けられず?

ニッケイ新聞 2010年5月18日付け

 15日夜イランのテヘランに到着したルーラ大統領は、16日にアハマディネジャド大統領や同国最高指導者のハメネイ師らと会談、ウラン濃縮問題も合意に達したと17日付伯字紙が報じた。しかし、トルコ首相も列席しての合意文書署名後の17日、イランが自国内での濃縮作業は継続すると発表し、国連安保理事会での制裁決議回避はより困難となった様だ。

 通商問題での合意なども含め、全てが成功裏に終ったとのブラジル外交筋の安堵感も覆すイラン外交がまた始まった―。
 17日付伯字紙報道の段階では、ルーラ大統領らの努力が実を結び、イランから国際原子力機関(IAEA)の提案に見合う合意を引き出せたとの肯定的報道が前面に出ていたが、17日午前9時頃から流れ始めたネット情報では様相が変わり始めた。
 16日の伯イ首脳間の合意内容は、同国保有の低濃縮ウラン1200キロをトルコに移送後、1年以内にロシアかフランスでエネルギー開発や医療用の20%に濃縮。同国へは20%濃縮ウラン12キロを返還するというもの。この濃度なら核兵器開発には程遠く、国際社会も納得できると考えたブラジル一行は、トルコ首相にも連絡をとり、17日朝、3カ国首脳が合意文書に調印した。
 この合意で制裁決議回避に充分な成果を得たとアモリン外相らが考えたのは無理からぬ話で、イランの大学教授や報道機関も、「ブラジル外交が米国の口をつぐませた」と発言したほどだ。
 ところが、17日朝、イラン政府が同国内でのウラン濃縮は継続すると発表し、事態が再び悪化した。
 「合意と濃縮継続は別問題」との同国政府関係者の言葉に、態度を硬化させた国際社会。ルーラ外交の成果に懐疑的で、合意の真価は今後の成り行きを見なくては評価出来ないとの米英発言を、イラン政府の発表がそのまま裏付けてしまった事になる。
 サルコジ大統領が好意的な態度を見せていたフランスも、外相が制裁に向けた動き強化と取れる発言。18日の欧州連合(EU)とラ米、カリブ諸国首脳会議出席のためルーラ大統領がイラン出立前に起きた波紋の大きさを、大統領一行がどの様に受け止めているかは17日14時現在何も報じられていない。
 メドヴェージェフ露大統領らは、合意達成までのルーラ大統領の努力を評価する声明を発表しているが、イラン政府の態度を見ていると、国際社会の「全てが時間稼ぎ」との見方や、イスラエルの「ブラジルやトルコはイランにだまされている」との発言にも頷かざるを得なくなりそうだ。