ニッケイ新聞 2010年5月20日付け
モルンビー区から出るのに1時間がかかる―、バスに乗っても時速12キロで鶏が走る速度より遅い―。サンパウロ市内での連日の通勤ラッシュ時の交通渋滞は、自家用車や公共バスを利用する住民の生活に大きな負担を強いている。18、19日付伯字紙が報じた。
モルンビー区では05年に612件だった高層建築が、昨年は2967件と5倍近くに増加。市交通技術公社によれば、午前中に同区のジョバンニ大通りをセントロに向かう車は1時間あたり2100台を数え、同区を抜けるのには約1時間もかかる状態だ。モルンビー競技場でサッカーの試合が行われる日は、特に大混雑が起こる。
そういった状況改善のため、3050万レアルをかけて建設中なのがペリメトラル・パライゾポリス大通り。年末までに完成の見込みで、ジョバンニ大通りと並行して走る同大通りの開設で、渋滞が40%軽減されると期待が寄せられる。
しかし、現段階では半分の建設計画しかたってない同大通りは、付近のファベーラ・パライゾポリスを迂回する手間を省くだけで、セントロへ向かうためには、最終的にジョバンニ、モルンビー大通りのどちらかに戻らなければならないため、根本的な問題解決には至らないとの指摘も挙がっている。
また、ジョバンニ大通りではファベーラが近いことから、渋滞に巻き込まれた車を狙ったファベーラ少年らによる強盗が増加している。1~2月だけで、111件の強盗事件が報告された。
一方、公共バス利用者にも懸念があがる。毎日約310万人が利用する10本のバス専用レーンでの調査では、ラッシュ時のバス平均速度は時速17・2キロ。一昨年、カサビ市長が時速18キロでの走行を目標にバス専用レーン整備事業を行ったにも関わらず、今年の平均速度は昨年を下回る結果となった。
最低水準は、サンパウロ市北部で記録された時速12キロで、リオ・ブランコ経由のイナジャール~セントロ間のバス利用者は「時速12キロから18キロに改善すれば、行き帰りで46分の短縮」と不満を募らせている。