ニッケイ新聞 2010年5月22日付け
全国拓植農業協同組合連合会(JATAK、本部・東京=大久保鉄夫理事長)が公募方式で農水省に申請していた本年度委託業務予算がゼロとなったことが、このほど関係者の話で分かった。これを受け、例年同予算を主財源に運営されてきたブラジル事業所(グァタパラ農業技術普及交流センター)の活動はほぼストップとなり、広瀬哲洋所長はすでに退職、110以上いた職員も現在は3人のみとなっている。日系農協関係者に対し、21日に説明会を行った五十嵐清一常務理事は、「センターの自主採算を考えたいが、具体的な方法は未定。帰国後に検討したい」などと話している。
JATAKは、1956年に農業者の海外移住を援助促進し、農村の生活、文化の向上に寄与することを目的に設立、農業青年の自立援助に貢献してきた。
66年にグァタパラにブラジル農業拓植青年訓練所を設置。
90年代からは事業目的を農業交流促進に転換、ブラジルを中心にパラグアイ、アルゼンチン、ボリビアの地域農業者・団体の支援に取り組み、日系若手農業者の日本研修送り出し、日本からの専門家派遣、巡回農業指導なども行ってきた。
02年には、農水省の国際農業交流促進特別対策事業で3200万円の援助を受け「グァタパラ農業技術普及センター」が建設されている。
サンパウロ支所は昨年10月に閉鎖、業務は同センターに引き継がれた。09年度には1億2千万円の予算がついている。
五十嵐常務によれば、今年から予算申請は公募制で行われた。事業仕分けとは関係なく、省内の判断で予算カットが決定され、4月中旬に担当者から口頭で説明があったという。
同センターの運営組織が公益団体となっていることから、定款上閉鎖すれば、ブラジルの福祉団体などに不動産を寄付しなければならず、「必要最低限の活動」をする必要がある。
当面の運営費は、JATAKが100%の株を所有している「グァタパラ農牧有限責任持分会社」(川上隆治代表社員)の剰余金が運用されるという。
「不足分はセンター独自の利益が上がる事業をしなければいけないが、具体的に何をすればいいか検討がつかない。帰国後に本部で協議したい」と五十嵐常務は話す。
そのうえで、「11年度に予算申請することから、いつでも活動できる体制を整えておきたい。長年活動し、地権や日系農協との関係もある。無駄にするわけにはいかない」とあくまでも1年間の〃休眠〃と考えているようだ。