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消費加熱の裏で負債増大=手軽な融資で購買力向上=クレジット利用は米国並み=懸念される債務不履行

ニッケイ新聞 2010年5月26日付け

 景気や消費拡大に伴って、ブラジルの一般消費者向けクレジットの水準は米国並みになったと23日付エスタード紙や24日付フォーリャ紙が報じた。融資が容易に受けられる様になった事で国民の購買力は向上したが、専門家からは、負債を抱え債務不履行となる危険性のある家庭が増えた事への懸念の声も出ているという。

 09年のクレジット総額は、国民総生産(GDP)の24・6%だった03年の水準を大きく拡大して45%に到達。中でも成長著しいのが、02年にGDPの5・1%だった一般消費者向けクレジットだ。
 09年にはGDPの15%に相当する4875億レアルが一般消費者向けクレジットとして動いており、GDPの17・2%が一般消費者向けクレジットとして動く米国に迫る額を記録した事になる。
 一般消費者向けクレジット増加の背景には、金利の低下や所得向上、返済期間の延長、消費者信頼指数の向上などがあり、特別小切手や銀行の個人融資、ローンやクレジットカード利用などによる購買力拡大は4倍との記述さえある。
 米国の場合、一般消費者向けクレジット利用の中心はクレジットカードだが、ブラジルでは、銀行などを通しての個人融資が急速に伸びている。
 07年3月から今年3月までの数字で見ると、特別小切手利用が138億レアルから176億レアル、クレジットカード利用が149億レアルから270億レアルに拡大したのに対し、個人融資は857億レアルから1701億レアルと急増している。
 04年から09年にかけての個人向け銀行口座開設は、人口増加率7%を大きく上回る200%超である事も個人融資急増の一因で、これにより車などの耐久消費財購入もより容易になった。
 また、専門家が今後さらに増えると見ているのが住宅関係の融資で、購入資金貸付や建築業者への融資は、今年だけで30%成長の見込み。現在はGDPの3%以下の住宅関連融資が20%を超えるのはここ数年のうちだと見られている。
 一般消費者向けのクレジット拡大は政策金利引上げで下火となる可能性があるが、クレジットカードの利用拡大が債務不履行増加につながっているとの記述や、5千レアル以上の負債を抱える家庭が2月には2570万世帯に達し、07年2月比で倍増との記述は安易に見逃せない。
 Dクラスではつけで買う人が40%。カードを貸しあったり、食券などを売って家計の足しにするのも一種のクレジットだというが、国内消費は6年続けて拡大という数字の裏に、負債増額、債務不履行の危険拡大の数字が隠れている事にも注意が必要だ。