ニッケイ新聞 2010年6月5日付け
2日付の雑誌「Veja」に労働者党(PT)内で対立候補糾弾のための機密文書(ドシエー)作成への動きがあった事を告げる記事が掲載され、セーラ氏が2日に、「黒幕はジウマ氏だ」と発言。同発言を受け、PTがセーラ氏を訴えると言い出すなど、大統領選は本番開始前から泥沼の様相を呈し始めたと3日、4日付伯字紙が報じている。
事の発端は、PT党内で大統領選の対立候補を陥れるための機密書類作成への動きがあったが、ブラジリアのジウマ氏宅で中止命令が出たと報じた2日付Veja誌だ。
機密書類作成のために動いていたのは、ジャーナリストのルイス・ランゼッタ氏を頂点とし、警官や政府の諜報機関元職員、私立探偵などからなるグループで、既に盗聴器設置など情報収集も始めていたようだ。
4日付フォーリャ紙などによると、集められていた情報は、民主社会党(PSDB)のセーラ氏が1994年の選挙に出馬した時の影の選挙参謀で、カルドーゾ政権でも中銀の国際部門を担当した事もあるリカルド・セルジオ・デ・オリヴェイラ所有の会社や、セーラ氏の娘夫婦が関係する会社などの資金の流れに不正があった事を取り上げたものだという。
このような機密文書作成の動きがあったとの報道をセーラ氏やPSDB陣営が快く思うはずはなく、「黒幕はジルマ氏に違いない」とのセーラ発言につながった。
PTの機密文書作成事件は、サンパウロ州知事選出馬予定のアロイジオ・メルカダンテ氏が関与したものや、故ルチ・カルドーゾ氏に関するものなど、スキャンダルに発展したものもあり、最後のスキャンダルでは、当時官房長官であったジウマ氏が指揮したとの疑惑が沸騰。責任をとる形で右腕とされたエレニセ・ゲーラ氏(現官房長官)を更迭する処置もとられた。
今回のVeja報道では、ジルマ氏は機密文書作成には何ら関与しておらず、「機密文書が提出されてもゴミ箱に投げ込む」と発言しているが、セーラ陣営にとっては、ジウマ氏は心の冷たい人物で、PTは相変わらず汚い手を使うというイメージ定着に使える材料に他ならない。
フォーリャ紙によればPT内部での分裂も生んだという機密文書問題だが、PT側は、セーラ発言は事実無根と反論し、発言が真実なら名誉毀損に当たるとして、3日には同件を裁判に持ち込む意向も表明。PSDB側は、PTこそ真実を明かすべきだとしている。
セーラ発言後のPT側の対応では、ジルマ氏の友人でPT加入後の同氏の地固めに尽力したフェルナンド・ピネンタウ氏の影響力低下など、党内勢力図の変化も明らかになったという。