ニッケイ新聞 2010年6月9日付け
【既報関連】「Veja」誌が、労働者党(PT)のジウマ・ロウセフ大統領候補の選挙参謀達が対立候補糾弾用の機密文書(ドシエー)作成を試みたと報じた後、当事者達の証言や反論を伯字紙が連日報じている。今回の機密文書騒動で、選挙参謀の1人でミナス州知事選出馬も目論んでいたフェルナンド・ピメンタウ氏が上院選に鞍替えなど、PT党内の勢力図の変化も顕著となった。
民主社会党(PSDB)からの対立候補ジョゼ・セーラ氏から、PTの常套手段で「黒幕はジウマ氏」との批判も飛び出した機密文書問題。
セーラ発言は事実無根としたPTは7日、釈明を求める文書を司法当局に提出したと8日付伯字紙が報じたが、同氏は世間の目をそらせるための画策と一蹴し、係わり合いを避ける構えだ。
だが、セーラ氏告訴以上に気になるのは、機密文書作成の情報は真実か否かと、誰がどの様な役割を果たしていたかだ。
同件については9日付「Veja」誌が、個人情報収集を依頼されたという連警元警部オネージモ・ソウザ氏へのインタビューなどを掲載。
同誌によると、ジウマ氏の友人でベロ・オリゾンテ元市長のピメンタウ氏の名前で予約されたレストランで、ジャーナリストのルイス・ランゼッタ氏らと会ったソウザ氏は、PTの選挙戦略をメディアに漏らした人物解明と、セーラ氏とPSDBのマルセロ・イタジバ下議の個人情報収集を頼まれたという。
ソウザ氏は、個人情報収集の要請は受け入れ難く交渉は成立しなかったというものの、別の諜報活動経験者と共に、現政権とも関わりを持つ企業家や元ジャーナリストの作家も同席との証言は、同事件にPTが関わっていた証拠といえる。
これに対し、ランゼッタ氏らは、セーラ氏内偵はソウザ氏が持ちかけた話で、イタジバ下議はPTなどを内偵した機密文書を持っているとの情報も提供してきたという。
一方、事件関与を示唆されたピメンタウ氏やイタジバ下議は各々、発言は虚偽と主張。ピメンタウ氏に関しては、ソウザ氏が示した経費は高すぎると答えたとのランゼッタ証言もあり、真偽の程は明らかではない。
しかし、大統領選への影響を恐れたPT幹部が関係者を選挙参謀室から遠ざけたいのは当然で、ランゼッタ氏は5日に選挙戦離脱を表明。同氏を選挙戦に引き込んだピメンタウ氏もミナス州知事選出馬を諦め、上院議員選出馬となった。
ジルマ氏の旧友としてPT内でも実権を握っていたピメンタウ氏の後退は、サンパウロ州のPT政治家がより勢力を強めた事を意味するが、泥沼化の様相は隠せない大統領選。各候補者が正式立候補を届け出る前の党大会は、10日の緑の党を皮切りに、30日まで開催の予定だ。