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欧州危機で利益送金76%増=多国籍企業が本国へ=ブラジルへの直接投資も減額=旅費値下がりの恩恵も

ニッケイ新聞 2010年6月16日付け

 今年になってから表面化した欧州経済危機の影響で、欧州に本社がある多国籍企業の1~4月の利益送金が44億ドルに及び、昨年同期を74%も上回ったと15日付エスタード紙が報じた。多国籍企業への欧州危機の影響は、ブラジルへの直接投資減額という形でも表れているが、同日付フォーリャ紙によれば、一般消費者には欧州への旅行経費が安く済むという副産物も生んでいる。

 欧州経済危機の影響は思いの他大きく、欧州に本社がある多国籍企業の場合、09年1~4月の第1三半期には52億ドルであった本国への利益送金が、今年の第1三半期には同期比74%増の44億ドルに膨れ上がったという。
 国内の景気が好調な時には外国からの直接投資が増える傾向があり、その後の利益送金の増加を伴う事は当然だが、第1三半期の利益送金が74%も増えた事は、欧州の多国籍企業が新たに発生した経済危機での損失補填のため、ブラジルで得た利益を必要としている事を示すものでもある。
 しかも、第1三半期の直接投資も減少したという報道は、現時点ではこれらの多国籍企業が欧州での損失を挽回する事で手一杯で、ブラジルへの新たな投資には及ばないという現状を反映。第1三半期の欧州主要10カ国からの直接投資は、09年の58億ドルから29%減の41億ドルになっている。
 特に顕著なのはスペインやポルトガルで、スペインへの利益送金は、09年第1三半期の80%増となる11億ドルに達する勢いで、同国からの直接投資は10億ドルから2億7100万ドルに74%減少している。オランダ企業の場合も、利益送金が114%増の17億ドルに達した一方、直接投資は20億ドルから8500万ドルに減額している。
 経常収支赤字拡大が続くブラジルにとって、これら欧州企業の利益送金増と直接投資減の影響は大きく、第1三半期の直接投資総額78億8千万ドルに対し、利益送金総額79億3千万ドルと出超傾向が強まっている。
 また、2000年は33億ドルであった利益送金が08年には338億ドルに達したという事実は、ブラジルの成長に期待した直接投資が増え、利益送金も増えた事に起因するが、09年の利益送金が252億ドルに減少したのは、国際金融危機の影響でブラジル内の経済活動が縮小した事の証拠だ。
 フォーリャ紙には、欧州経済危機による直接投資減額と国内の減税処置終了で4月の自動車業界は減速とある様に、国内経済の動きは世界の経済動向と無縁ではない。
 エスタード紙によれば、欧州経済には回復の兆しが見え、4月の工業生産は3月比で0・8%増加、ユーロも回復し始めたというが、ブラジルからの欧州旅行パックはレアル高のため内容次第で26%安くつき、旧大陸を知るチャンスとフォーリャ紙が報じている。