ニッケイ新聞 2010年6月18日付け
「過去の過ちを心に留めて将来を見つめれば、全ての国民により良い視野が開ける」―。7年越しで進められてきた黒人の権利を確約する人種平等法案が16日の上院議会で承認され、冒頭の言葉で記されるように人種差別問題の改善へ大きな一歩を踏み出した。しかし、従来の提案に含まれていた論点の多くは省かれており、立案者らが理想とした法案実現は見送られた形となった。17日付伯字紙が報じた。
午前中に開かれた上院憲法・法務委員会の審議会の中で立案者パウロ・パイン上議(PT)、元人種平等政策大臣のエジソン・サントス下議(PT)、エロイ・フェレイラ・デ・アラウージョ人種平等政策大臣より説明が行われ、承認に至った。黒人コミュニティ代表者らも出席した。
同法案の制定は同上議らが7年間かけて進めてきたプロジェクトで、この後はルーラ大統領の裁可次第すぐさま施行される予定だ。
法案では文化・スポーツ・教育など多方面で肯定的に黒人を受け入れる、公的機関・民間企業の雇用において黒人を平等に扱う措置を取り入れる、映画・広告など宣伝活動で黒人の起用を増やすことを行政機関が監督することなどが承認された。また、入院時や施設滞在時にもアフリカ系宗教を信仰する自由などが謳われた。
その一方、長年論争が重ねられてきた提案のいくつかは今回承認された法案では省かれた。それらは、黒人を20%以上雇用する企業に公的な支援を行なう、大学入試や公立専門学校コースの募集で優先枠を設ける、各政党10%の候補者枠を設けることなど。
さらに、過去の人種差別事件への賠償や、テレビ番組、宣伝活動における黒人参加に20%の枠を確保する条項も提案されてきたが、こういった具体的な数字を含む条件は避けられたようだ。
こういった流れの一因には、テレビ会社や宗教団体らの反対運動もあげられる。パイン上議は「今回の規約内容は十分とは言えないが、黒人達の望みの90%は含まれたはず」と考え、「伯社会の人種の平等に向けた大きな一歩であることは間違いない。もう誰も差別を受ける必要はない」と力を込めた。