ニッケイ新聞 2010年6月24日付け
国連薬物犯罪事務所(UNODC)が22日に発表した09年のコカ葉生産に関する報告書によると、ペルーでのコカ葉生産量がコロンビアを抜いて1位となったと23日付フォーリャ紙などが報じた。コロンビア、ペルー、ボリビアなどのコカ栽培国に囲まれ、従来から麻薬中継国と見なされていたブラジルは今年、エクスタシー中継国リストにも名が挙げられた。
UNODCによれば、09年のペルーでのコカ葉生産量は11万9千トンで、コロンビアの10万3千トンを抜き、世界最多となっている。
コカインの原料であるコカ葉は、南米諸国ではお茶として飲用に供する他、生葉を噛む習慣のある人もおり、コカ葉生産量即コカイン精製量とはならないが、10年間で60%も作付面積を減らしたコロンビアに比べ、ペルーやボリビアの作付面積は徐々に増加の傾向にあるのも気がかりだ。
コロンビアでの減反、減産は、02年に就任したウリベ大統領が米国の援助も得ながらゲリラ掃討を敢行してきた事に起因。治安対策の一環で麻薬取り締まりも強化して来た事の結果だ。
一方、ペルーでの作付面積は05~09年に21・6%増加。コロンビアで居場所をなくしたゲリラがコカイン精製所をペルー国内に移した可能性の他、極左ゲリラ「センデロ・ルミノソ(輝く道)」残党が地方を中心に勢力立て直しのため、麻薬ビジネスに深入りしているともいう。
UNODC担当者は、現在のコカイン精製量はコロンビアが1位だがこのまま行けば近い将来、ペルーが追い越すと懸念の色を隠さない。
一方、コカ栽培国に囲まれ、国内での麻薬販売のためにコロンビア革命軍(Farc)関係者潜入などのニュースも絶えないブラジルは、欧州やアフリカへの麻薬中継国。
従来はコカインや大麻流通が中心であったブラジルがエクスタシーでも中継国リスト入りとの報告も、欧州などの中継国ほどの取扱量ではないとはいえ、当局の神経を尖らせるには十分だ。
先日も輸入りんごの箱からコカイン押収という事件があったが、水際での流入出阻止と共に、麻薬組織や運び屋の摘発強化などが今後も継続する課題となる。
連邦警察も加わった麻薬組織摘発作戦などにより、09年に麻薬関連で収監されていた犯罪者は8万6千人超で、強盗・窃盗の7万4千人以上の上、05年の3万1500人から急増とは22日付G1サイトの報道だ。
同サイトでは、組織メンバーの妻などの女性収監者数は男性と比べ倍増とも報告されており、大半は麻薬を携行していたとして逮捕された運び屋と見られている。
大統領選候補のセーラ氏がボリビアからの麻薬流入を批判するなど、麻薬問題は政治や経済、治安などにも関係してくるだけに、南米各国のコカ葉生産や精製問題も他人事ではない。