ニッケイ新聞 2010年7月3日付け
2009年度の基礎教育開発指数(Ideb)が1日に発表され、小、中学レベルでの改善は目に見えるものがあるが、高校課程の学力向上は期待していたレベルに達していないと2日付伯字紙が報じた。全課程で09年度の目標値達成とはいうものの、専門家からは高校を卒業しても労働市場が要求するだけの力がついていない学生が依然として多い事を懸念する声も上がっている。
2005年との比較では6~10歳の小学課程で0・8、11~14歳の中学課程で0・5、15~17歳の高校課程で0・2、前回の07年比では各0・4、0・3、0・1の向上を見た同指数は、留年を避けつつ学力向上を目指すために導入されたものだ。
全員就学への試みを開始した1995年から2001年にかけての基礎学力の低下が甚だしかったブラジルにとり、同指数の改善は教育レベルと生徒の学力向上の証拠だが、それでも95年のレベルまでは回復しておらず、経済開発協力機構(OECD)加盟諸国平均の6割程度だという。
2001年までの学力低下は、家庭が貧しく子供も労働力として期待されているなどの理由で就学していなかったD、Eクラスの子供達が就学し始めた事が原因で、親の学歴も出席率も低い生徒の中には、学校に来ても授業の内容についていけない子供も多かった。
この様な状況を懸念した教育省が改善策の一環として05年に取り入れたIdebは、2年毎のテストで学力の伸長度を測っている。
昨年の指数は、小学課程4・6、中学課程4・0、高校課程3・6。全課程で目標値の4・2、3・7、3・5を達成したが、小学課程での改善が01年から始まった事を考えると、高校課程での改善は期待したほどではなかったという。
教育の専門家は「受けた教育の質はその人物の生産性に反映される」と指摘し、子供の学力回復の遅れは、ブラジルが持つ競争力の低下をも意味すると懸念する。
報告には、高校でも半分が50%と同じである事が分からない、四則計算の間違いがある、文章の主題がつかめないなどの問題を抱えた生徒がいるとあり、労働市場から高校を卒業していても使い物にならない人がいるという苦情が出るのも納得できる内容だ。
大学生でも入学後にポルトガル語の学力が低くて補習が必要な学生がいるなどの指摘は以前からあったが、科目別授業となる中、高校課程では、物理などの教師も不足。
今回の報告とは別に、私立校が開発、編集したアポスチーラと呼ばれる教材使用校では、一般公立校用の教材使用校より学力が高いとの調査報告もあり、カリキュラム充実、教材開発などの課題も山積み。教育にも、現場と行政、労働市場などの連携が必要なようだ。