ニッケイ新聞 2010年7月15日付け
ブラジル政府は13日、リオ~サンパウロ州間の高速鉄道の入札を公示した。14日付伯字紙などによると、総事業費331億レアルと見込まれている国内最大級のインフラ整備プロジェクトの応札は11月29日までで、12月16日に落札者が決まる。
現時点で7カ国が関心を示しているといわれる高速鉄道は、構想発表当初2014年のW杯までに完成といわれていたものだが、入札規定制定の遅れなどで、2017年までに完成と予定が変更されたようだ。
政府原案では着工から完成まで5年としていた期限が6年に変更されたためで、落札後90日以内に契約が結ばれても実際の着工は2011年末になると考えられている一方、どの部分の工事からとりかかるか、完成した部分から順次開業させるかの判断は落札業者に委ねられる。
このため、入札公示式典でのルーラ大統領が、「2016年のリオ五輪前の完成、開通を願う」と発言をした他、あわよくば2014年のW杯前に一部だけでも開通との発言が出ているようだ。
今回公示された入札で落札した業者は、リオ~サンパウロ市~カンピーナスをつなぐ約510キロの工事と開通後の運営を担当する事になるが、総事業費の約1割に当たる34億レアルは、新設される鉄道公社を通じての政府出資の形をとる。また、社会経済開発銀行(BNDES)も、199億レアルを上限として融資を行う予定だ。
規定では、リオ市中央、ガレオン空港、アパレシーダ、グアルーリョス、サンパウロ市中央、カンピーナス市中央、ヴィラコッポス空港の7駅の設置が義務付けられ、リオ~カンピーナス間を1時間半~2時間でつなぐ予定。ヴァーレ・ド・パライバにはリオ側とサンパウロ州側各1カ所の駅設置が可能だ。
落札業者決定は、応札期間内に出された事業計画に基づくが、最初の判断基準は提示された運賃の安さ。同じ額を提示した業者があった時は、高速鉄道事業での運営実績の長さで判断される。
現在関心を示しているのは、台湾に続く新幹線導入を目指す日本や国外での受注実績づくりを目指す韓国や中国、イタリア、フランス、ドイツ、スペインで、内外の業者を取込みながらコンソーシアムを組む作業が一段と活発になりそうだ。
入札が公示されたとはいえ、運賃上限199・90レアルを掲げた会計検査院さえ、地勢条件などの分析が完全とはいえず総事業費が見込み額を上回る可能性を指摘。コンソーシアムを組もうとしている企業でも応札期間内の完全な事業計画立案には困難が予想されているようだ。
立ち退き費用だけで22億レアル、山あり谷ありの難工事でもある高速鉄道工事では、直接、間接合わせて1万2千人の雇用創設、運営開始後も6万人の雇用が確保されると考えられている。