ニッケイ新聞 2010年7月20日付け
大統領府女性政策局が大量配布した刊行物が野党議員らの猛反発を呼び、当局が配布打ち切りという事態が発生した。15、16、17日付エスタード紙によると、女性をもっと公職にと呼びかける内容の解説書には、労働者党(PT)ジルマ・ロウセフ氏の経歴が6ページ挿入されており、スキャンダルになる事を嫌った同氏選挙参謀らが関係者と会談の上、配布停止が決まったという。
刊行物は国連開発計画とブラジル政府協賛発行の本3千冊と解説書21万5千部、ポスター2万枚の3点セットで、女性政策局が配布を担当。当初は10万部、2万7千レアルと計上されていた解説書印刷費は、増刷注文で5万8千レアルに膨れ上がり、刊行総額は7万2千レアルとなっていた。
08年の女性の権利に関するフォーラムで承認された、政治にも女性の声を反映させるため公職により多くの女性参加を実現させようとの呼びかけや、そのために積極的な投票を促すという内容には賛同する野党関係者を驚かせたのは、今回配布された刊行物にジウマ氏の言葉や経歴が堂々と記載されていた事。
表紙にある投票機の確認ボタンの図と「私はこの約束を果たします」との言葉は投票権行使の意味にもとれる。また、ジウマ氏の「女性には要職に就きその責任を果たす能力がある」との言葉や、同氏が大統領選候補者として公認された後配布というタイミングは、同氏支援の選挙活動とも見なされうる。
野党も承認した08年フォーラムの内容が、今頃、しかも09年のジルマ氏の公演内容と共に刊行、配布された事について、女性政策局は「資金繰りがつかず発行が遅れたもので選挙支援の意図はない」と釈明するが、解説書に党名記載もあった民主党(DEM)議員は、「自分達が承認したのは08年フォーラムの内容で、ジルマ氏の名前や経歴入りの解説書なぞに係わる意思はさらさらなかった」と語気も荒く批判を行った。
野党側の反発やメディア報道などに慌てたジルマ氏選挙参謀や官房庁関係者は弁護庁のルイス・イナシオ・アダムス氏と話合い、問題の刊行物は在庫が無くなったとして配布停止を決定したが、在庫はないとの発言は、14日にラ米の女性問題についての会合に送られた刊行物に、「足りない場合は連絡次第送付」との手紙が添えられていたのと矛盾している。
エスタード紙によれば、〃女性をもっと公職に〃との呼びかけは政府公式ブログに掲載され、ジルマ氏も選挙キャンペーン用サイトで同ブログをアピールしていた。公式な選挙活動期間前の配布だったとの女性政策局の弁明も、公職選挙法違反や公費流用などのスキャンダル回避への一方策に過ぎないようだ。
なお、国連側は刊行物発行費用一部支援を認めたものの、内容に関する責任は全面的にブラジル政府にあると弁明している。