ニッケイ新聞 2010年7月20日付け
18日付エスタード紙が、南アフリカはサッカーW杯終了と同時に貧困と暴力という現実に引き戻されたと報じた。
6月11~7月11日のW杯ホスト国としての重責を果たし、2020年のオリンピック立候補の声も出ている南アだが、祭り後には厳しい日常が待っていた。
W杯時25%だった失業率は祭典終了で上昇と見られている上、外国人移民に対する排斥運動の激しい地域などに敷かれていた警戒態勢解除、W杯直後からは電力会社のストも始まるなど、貧困やエイズ、社会格差に暴力といった現実が容赦なく国民を襲う。
更に拍車をかけるのは政界指導者が分裂状態にある故の政治的混乱で、同国に詳しい外国人専門家は、ズーマ大統領はW杯を利用して、公的サービスの不足や汚職などの問題山積みという同国の実態を隠す煙幕を張ったと表現するほどだ。
一方、14年のW杯と16年のオリンピック開催国のブラジルでは、南アほどの失業問題などは起きていないが、会場準備やイベント中の賑わいへの期待が大きい反面、周辺での交通渋滞や騒音問題などへの取組みが心配される。インフラなども含む準備と共に、会期中や会期後の地域のあり方を検討する事も必要だ。
W杯会場が未だに決まらぬサンパウロ市では21日、第1候補モルンビー、第2候補ピリトゥーバの形での話合いが予定されている。しかし、モルンビーの住民が交通網の整備などの利点への期待と共にその後への懸念を口にする一方、ピリトゥーバ競技場建設参加を打診されていたコリンチアンスは、計画通りの規模の競技場を建設したらその後の維持費が大変だとしてピリトゥーバ案からは手を引く意向表明など、反応はまちまちだ。