ニッケイ新聞 2010年7月21日付け
ブラジルと日本の社会保障協定が今月末に合意される見通しになった。ブラジル社会保険省の発表によれば、今月16日に行われた公聴会でカルロス・エドゥアルド・ガバス大臣が言及したもの。署名は29日に東京で実施。あわせて東京で、デカセギ現象を起こした90年の改正入管法施行20周年を記念したセミナー、関連行事が行われる予定だ。
在日ブラジル人、在伯日本人が両国で公的年金の加入年数を通算できるようにする社会保障協定。これにより、社会保険料の二重払いまたは実質的な掛け捨てだったこれまでの状況が改善される。
協定が発効すれば、日本で暮らすブラジル人が日本で納める保険料をブラジルで支払った保険料と合算することが可能になり、両国の受給期間を満たせば日本またはブラジルで年金を受給することが可能になる。
ブラジル駐在企業にとっては、日本の年金法令だけが適用されるようになり、人件費の削減につながるだけでなく、新たにブラジル進出を考える企業にとっても有利になる。
日伯間の社会保障協定締結に向けた会合は04年に開始。05年にブラジル側で両国の制度について意見交換する作業部会が設置され、06年に日本、08年にブラジルでそれぞれ会合がもたれた。
09年7月にイタリアで行われたルーラ大統領と麻生太郎総理(当時)の首脳会談で、締結交渉開始を確認。今年1月にブラジリアで両国の公式会合が開催され、来年の発効を目指して検討が続いてきた。
ブラジルは昨年12月にドイツと社会保障協定に署名。カナダやケベック、ベルギーとの交渉を進めており、将来的にはイスラエルやシリア、レバノン、アフリカ諸国との交渉も視野に入れているという。
日伯間の署名式にはガバス大臣が出席する予定。協定発効のためには、両国議会の承認が必要となる。
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ブラジル外務省と労働省は30日から8月7日までを「在日ブラジル人労働者週間」として記念行事を実施する。
改正入管法施行20周年の記念セミナー「在日ブラジル人の20年」は30日、東京の国連大学で開催。(入場無料。日ポ語同時通訳、申し込みはメール=comunidade@brasemb.or.jp)。アンジェロ・イシ武蔵大学准教授、北脇保之・東京外国語大学教授、ハタノ・リリアン近畿大学准教授、山脇啓造・明治大学教授らによる講演や討論などが行われる。
31日には浜松市で、在日ブラジル人の労働問題の相談などを受け付ける「ブラジル人労働者の家(Casa do Trabalhador Brasileiro)」を開設。翌8月1日には名古屋市のポート・メッセで「在日ブラジル人の日」記念フェスタが開催される予定だ。