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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年7月24日付け

 金賢姫さんが訪日し、マスコミを賑わし話題になった。賢姫さんは、北朝鮮の諜報員だった。大韓航空機を爆破し乗客ら115人を死に追いやった人である。拉致された田口八重子さんに日本語を学び、蜂谷真由美の偽名を使い、父親役の金勝一(蜂谷真一)と2人で液体爆薬を機内に仕掛けた犯人であり、勝一は青酸系の薬物で服毒自殺、賢姫さんは未遂で入院したの記録が残っている▼韓国は、死刑の判決を下したが、特赦で今は結婚し普通の市民として暮らしている。恩師の八重子さんの関係もあり、日本人拉致についてかなりくわしい。だが、北朝鮮が、黄長燁・労働党書記の暗殺未遂事件を起こすなど身の危険もあり、訪日も特別機だし、日本滞在中も厳しい警備が続いている。宿舎が軽井沢の鳩山前首相の別荘なのも、日本の政府筋の配慮と見ていい▼ともかく、北朝鮮による日本・韓国からの拉致事件には「謎」だけが多い。賢姫さんに日本の習慣や文化を教えた田口八重子さん(李恩恵)の生死に関しても、北朝鮮は「死亡」と公表しているが、中井洽・拉致担当相は「6、7年前まで平壌で元気だった」の情報があると語り、韓国でも同じような発言をしている拉致被害家族もいる▼こんな緊迫した空気の中でも、軽井沢での賢姫さんは快活に振舞っているようだ。八重子さんの家族には、自分で台所にたち自慢の腕を振るった昼食でもてなし、まゆみさんのご両親とも親しく懇談しているし、拉致やその他についてのいろんな話題を話し合ったと思いたい。なにはともあれ、この拉致問題の喫緊の解決を望みたい。(遯)