ニッケイ新聞 2010年7月31日付け
今年もまた桜の季節がやってきた。ここサンパウロでは、故・細江静雄医師が導入に尽力したとされるカ・ジョルドンが有名だが、近頃はイタケーラのカルモ公園が見事なばかりの美しさを見せる。あの公園に桜を植栽したのは地元の日本移民らであり、確か移民70周年の頃だったと記憶するが、すでに30数年になり、桜の花々も今を盛りと咲き誇る▼ヒマヤラ近郊が原産の桜は種類も多く600種を超えるし、万葉集にも詠まれているが、当時は梅の人気が高く、桜の歌は44首なのに梅は118首。これが平安時代になると、花は櫻を意味するようになり、西行法師は「願わくば花の下にて春死なんそのきさらぎの望月のころ」の和歌を遺し、願いかなって旧暦の2月16日に入寂したと伝えられる▼櫻と言えば、もう10数年か前に岐阜の淡墨櫻の子孫が州知事官邸に植えられたが、もう花をつけているかもしれない。この国指定天然記念物は樹齢1500年とされ山梨の神代櫻の1800年に次ぎ、福島は三春の瀧櫻と共に日本3大櫻であり、3本とも枝垂れ櫻だそうな。あのバンデイランテス宮の広い庭に日本の枝垂れ櫻が花開けば―これはまた魅力的で人々は目を輝かせる▼勿論。樹齢500年の櫻も多いが、一般的に―この木の寿命は短いらしい。とりわけ園芸種の染井吉野は60年ほどとされるが、弘前城では、櫻も剪定し保護すると100年超でも元気だし、毎年200万人を超える観光客を楽しませると講談社の「本」にあるから―手入れをすれば長生きもするらしい。カルモ公園櫻祭りは明日8月1日。(遯)