ニッケイ新聞 2010年8月13日付け
日系農協主催の二大「花の祭典」であるアルジャー、アチバイアの花 祭り。広報のため弊紙を訪れた関係者が携えてくれたランが目の前に置かれている。雑然と詰まれた資料のなかで原稿を書きながら、ふと目を遣るのがささやかな楽しみとなっている▼最近寒い日が続くだけに、春の訪れを期しているのだろう、編集部の古参記者が「リベルダーデ駅のツツジが綺麗なので、10分ほど見とれていた」という。久々の陽気に誘われ、出先の帰りに歩を止めてみた▼4種類の美しい色のなかに、赤紫のような彩りのものが一つ。桜、桃、山吹、すみれ、バラなど花の名が色を表すものがあるが、これは「ツツジ色」といい、「躑躅燃ゆ」と形容するらしい。調べてみると、ツツジと日本人との関わりは深く、実に42都道府県でそれぞれの市町村の花に指定されている。世界で初のツツジ専門書「錦繍枕」が元禄時代の1692年に発行。広辞苑によれば、錦繍とは美しい詩文の字句をも指すらしいが、万葉集にもでてくる由緒正しい花である▼昨年あった『第24回国民文化祭・しずおか2009』でもブラジルからの投句「破鍋にツツジ咲かせて移民妻」(身吉尚子)が見事入選しているし、老ク連の機関紙「老壮の友」の今月号にも「満開のつつじ眺めて日々ゆたか」(栢野桂山選、山田富子作)が見える▼今月1日にあった援協やすらぎホームの「第32回ツツジ祭り」も盛況だったようだ。その経緯を聞けば、日系農家から寄付された土地にすでに植えられてあったものを増やしていったとか。かつて、その蜜を吸った体験をふと思い出した。(剛)