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日本語教師リレーエッセイ=第8回=協力あってこその日本語教育=ピラール・ド・スール日本語学校=岡田エリーナ

ニッケイ新聞 2010年8月14日付け

 私は結婚してすぐ日本へ出稼ぎに行きました。その時に夫を病気で亡くし、幼い娘と二人で帰国し、これからの事を色々と考えていた時、日本語学校を運営するピラール・ド・スール文化体育協会の役員から、日本語学校の教師をやってみないか、というお話がありました。
 その頃は自分が日本語教師になるとは夢にも思っていませんでした。私がちゃんと生徒に教えられるのかどうか胸に不安を抱いていました。しかし、思いきって決断して教師を始め、今年でかれこれもう12年目となります。
 12年と言いましたが、この年月は全然長く感じられません。生徒達と一緒にいると毎日がとても楽しいです。毎年新しい生徒達が入学します。そして卒業していく生徒達もいます。その卒業していった生徒達がたまに日本語学校に遊びに来たり、外で偶然会ったりすると「先生こんにちは。元気ですか」と挨拶してくれたりすると、私はとても嬉しくなります。こういった関係は教師にしかなく、教師だからこそ味わえる感動だと思います。ですので、先生をやっていて本当に良かったとつくづく思います。
 ピラール・ド・スール日本語学校は週5日制の学校です。その他、生徒達は日本語学校の陸上部や太鼓部に参加したり、英語や公文等の習い事をうまく日本語学校の時間に合わせてしており、毎日とても忙しい日々を過ごしています。ですが、疲れも見せず楽しそうに本当に頑張っています。親が送り迎えをしてくれたり送迎バスなどで通っている子もいますが、田舎町なので、友達同士でわいわい言いながら歩いて通っている子もいます。
 私は今、幼稚園クラスで4才から6才の10人の児童を受け持っています。文字、歌、工作、体育、遊びなどを教えていますが、子供達の性格はそれぞれなので、大変なことも多々あります。
 でも楽しいこともたくさんあります。毎日授業の内容を考えますが、それは学校にある教科書をそのままコピーをして生徒達に渡すだけではなく、4・5・6才の年齢に合わせた手作りプリントを用意します。
 聖南西地区では2カ月に一回の定例会で2名の先生方の実践発表があり、その2週前にJICAシニアボランティアの勉強会もあります。また1月には教師合同研修会があり、それらでの発表を参考にさせてもらって、工夫しながら教材作りを頑張っています。アイデアに困った時などはインターネットで検索すると、すぐ使える物がたくさんあるので本当に助かります。
 日本から来られている先生達は、新しい情報やまた分からないことなどがあればいつも優しく教えてくれます。職員室の中が良い雰囲気だというのは、私にとっても学校にとっても非常に大切なことだと思います。
 日本語学校の行事には、入学式、母の日・父の日発表会、お話大会・卒業式などがあり、日頃の日本語教育の成果を多くの人達に知ってもらう為に、文協会員全員に招待状を出して見に来てもらいます。母の日・父の日発表会では、生徒達は頑張って練習をし、当日一生懸命発表します。おじいちゃんやおばあちゃんやお父さんやお母さん達は拍手して喜んでくれたり、褒めてくれたり、時には感動してくれたりします。こういう事って本当に大事だと私は思います。
 また、文協行事などにも生徒達は多く参加しています。例えば、家族慰安運動会では子供達の作品コンクール(作文・絵画・毛筆・硬筆)の全作品を展示したり、生徒全員による学校の出し物もあります。そして盆踊りや敬老会もあります。
 敬老会では各クラスの出し物があり、生徒全員の合唱もあり、敬老者全員に生徒達が心を込めた手作りのプレゼントを渡すと、おじいちゃんおばちゃんはいつも喜んでくれます。長年続けて行われている行事なので、文協会員の皆さんは毎年楽しみにしているようです。
 ボイ・ノ・ロレッテややきそば会などの資金稼ぎでは父兄はいつもよく働いており、その頑張っている親の姿を子供達は本当によく見ています。ですので、父兄の皆さんは大変かもしれませんが、子供達のためだと思ってこれからも頑張ってほしいと思います。
 私がこのように楽しく教師を続けていられるのも、このように文協や婦人会、父兄会などの方々のご協力があるからだと思います。

写真=岡田さん(後ろ中央)と生徒たち